ライブコマースの日本における市場規模とは?成功事例や現状、今後の展望について徹底解説

2023年9月7日

ECサイトにライブ配信を組み合わせた、ライブコマースが新しい販売手法として近年注目を集めています。ライブコマースは今後より市場が拡大すると見込まれていますが、現在の日本においてどれくらいの市場規模があるのでしょうか。

そこで本記事では、ライブコマースの日本における市場規模や現状から、成功事例も交えながら今後の展望について解説します。

ライブコマースの日本における現状の市場規模は?

ライブコマースの日本における現状の市場規模は?

日本国内でのライブコマースは、徐々に認知度を上げながら、年々市場規模を拡大している状況にあり、物販系ECの市場規模(BtoC)は2021年で13兆2,865億円でした。

参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

また、ライブ配信市場全体を見ても、日本国内の市場は順調に拡大し続けています。株式会社サイバーエージェントなどが2020年に実施した調査によれば、デジタルライブエンターテイメントの市場規模は2020年で140億円、翌2021年には314億円に拡大しました。

さらに、2023年には約700億円、2024年には約1,000億円規模にまで急伸すると予測されています。こうした状況から、日本でもライブコマース市場は堅調に拡大を続けているといえるのです。
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参考:デジタルライブエンターテインメント市場規模は急拡大。2023年に700億円超、2024年には約1000億円へ | CyberZ|スマートフォン広告マーケティング事業

また、ライブコマースを含めた動画配信市場も拡大傾向にあります。

一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の「動画配信市場調査レポート2023」によれば、2020年に3,710億円だった動画配信の市場規模は、2022年に推計で4,530億円となり、手堅い成長を見せています。そして、2027年には5,670億円まで拡大するとの予想です。

参考:その他販売物|一般財団法人 デジタルコンテンツ協会

ライブコマースが日本で「失敗する」「流行らない」といわれる理由

日本では、「ライブコマースの販売手法では失敗する」「ライブコマースは日本では定着せず流行らない」といわれることも少なくありません。このようなネガティブな意見がある理由について解説します。

ECモール型事業者の撤退事例が多い

ライブコマースにネガティブなイメージがあるのは、大手企業がヤフオク!・Yahoo!ショッピング・メルカリなどのECモール型プラットフォームに参入したものの、撤退した事例が多いためと考えられています。

ライブコマースのプラットフォームの種類には、SNS型・アプリ型・ECモール型・ECサイト埋め込み型があります。このなかでも、大手企業が参入したECモール型のプラットフォームの場合、ECモールに出店している事業者はライブコマースの配信を無料でおこなうことが可能です。代わりに、ストリーミングサーバー代などのコストは出店企業が負担しなければなりません。こうしたECモール型特有の課題が原因となり、大手企業であっても事業から撤退するケースが多く見られました。

しかしながら、こうした大手企業の撤退事例は、あくまでECモール型のプラットフォームに参入したケースです。他の参入方法でライブコマースに成功した事例は多くあります。

成功事例が目立ちにくい

ライブコマースの成功事例が目立ちにくいことも、「失敗する」「流行らない」といわれる原因のひとつです。

ライブコマースは、成果がでるまでに時間がかかります。ライブコマースの特性上、単発のライブ配信ではなく、中長期的なライブ配信と事業の運用により成果を出すものであるからです。

そのため、成功事例が目につきにくく、話題にもなりづらいのです。また、ライブコマース事業の成功を積極的にアピールする企業が少ないことも要因でしょう。

しかし、実際にはライブコマースを導入する事業者は年々増加しており、成功している事業者も多く存在します。

日本にはライブコマースをおこなう「ライバー」が少ない

日本ではライブコマースにおいて商品のPRや販促活動をおこなう「ライバー」が少ないことも、ライブコマースが流行らないといわれている理由のひとつです。ライバーとは、ライブ配信を専門におこなうインフルエンサーのことで、ライブ配信に必要な高いスキルを持っています。

ライブコマースに慣れたライバーであれば、商品の魅力を伝えられる訴求力があるので、視聴者の購買行動を引き起こしやすくなります。

日本では、動画配信やSNSでの商品宣伝をおこなうインフルエンサーは多いものの、ライバーとして活動する方はまだまだ少数です。このように、日本には影響力のあるライバーが少ないことから、ライブコマースがなかなか浸透しないのではといわれています。

日本でのライブコマース市場は今後拡大が期待されている

日本でのライブコマース市場は今後拡大が期待されている

日本のライブコマースは、今後市場が拡大していくと考えられています。

2020年から2021年にかけて、コロナ禍の影響により、非接触で商品を購入できるEC販売に注目が集まりました。なかでも、実店舗と同様のコミュニケーションがとれるライブコマースに対する消費者ニーズが上昇しています。そのため、多くの企業がライブコマースの導入を検討しており、市場に対する期待値も上がっているのです。

最近では、TikTokやInstagramなど、SNSもライブコマースサービスの提供を開始しました。ICT総研が2022年におこなった調査によれば、日本のSNS普及率は82%と高水準です。SNSを媒体としたライブコマースの活用は、ライブコマースを利用する人の増加に貢献するでしょう。

参考:2022年度SNS利用動向に関する調査|ICT総研【ICTマーケティング・コンサルティング・市場調査はICT総研】

ライブコマースにおけるコンテンツ作りのポイント

ライブコマースにおけるコンテンツ作りのポイント

自社商品をライブコマースで販売する際は、ライブ配信のコンテンツ作りにおいて以下のポイントを押さえておきましょう。ここでは、3つのポイントを紹介します。

ライブコマースに適した商品・サービスを紹介する

静止画像や文章だけでは伝えきれない、商品の魅力・使用感を伝えられるのがライブコマースの特徴です。、よって、視覚的に効果を伝えやすい商品がライブコマース向きの商品といえるでしょう。

具体例として、以下の商品はライブコマースでの紹介に適しています。

【ライブコマースに適した商品】
・化粧品
・アパレル商品
・食品や飲料
・家電
・家具 など

配信時間・配信頻度にこだわる

ライブコマースは、商品のターゲット層に合わせて配信するタイミングを調整することが大切です。

適切な配信時間を知るために、曜日や時間帯を変えながらライブ配信をおこない、ターゲット層が一番多く集まるタイミングを検証していきます。

さらに、ライブ配信の頻度は週に1〜2回程度が一般的ですが、視聴者の興味・関心が薄れてしまわないよう定期的にライブ配信をおこないましょう。配信時間は30分〜1時間程度と、動画に比べて長めに設定すると、ライブ配信に気づいてもらいやすくなるためおすすめです。

事前にコンテンツの企画・流れを決めておく

ライブコマースを実施する際には、事前に企画を考え、コンテンツの大まかな流れと台本を用意しておくことがポイントです。視聴者がライブ配信を楽しめるよう、飽きさせない工夫を台本に織り込んでおいてもよいでしょう。

大まかな流れを決めずにアドリブだけで進行すると、冗長なライブ配信になり、視聴者の興味・関心を失う可能性があります。

加えて、視聴者の質問に答えられるよう、ライブ配信で取り扱う商品について十分な知識を学んでおくことも重要です。商品に関することは、その場で答えられるように準備しておきましょう。

日本でライブコマースを成功させるために意識すべきこと

日本でライブコマースを成功させるために意識すべきこと

日本でライブコマースを成功させるためには、いくつか意識しておきたいポイントがあります。ここでは、代表的なものを4つ紹介します。

知識量や熱量のある配信者の起用

ライブコマースの成功に重要な要素として、ライバーの選定があります。ライバーには「心からよいと思う商品を、人にもおすすめしたい」という熱量が求められます。

ライブコマースは「誰から購入するか」が非常に重要であり、信用できるライバーでなければ視聴者は商品を購入したいとは思いません。

したがって、商品知識をしっかりと持ち、商品への理解度が高い配信者を起用することで、視聴者は安心してライブコマースでの買い物を楽しめます。

視聴者とのコミュニケーションが重要

ライブコマースでは、視聴者とのリアルタイムでおこなわれるコミュニケーションが重要となります。

ライバーが視聴者の悩みや疑問を吸い上げ、コメントに丁寧に対応することで、「この人がすすめる商品なら買ってもよいな」と視聴者からの信用を得ることにつながるでしょう。

視聴者視点で見え方を意識する

ライブ配信は、視聴者視点を意識したものにしましょう。

ライブ配信を撮影する場所が暗かったり、音声が聞こえにくかったり、カメラのアングルが悪く商品が見えにくかったりすると、視聴者はストレスを感じてしまいます。そうなれば、商品の魅力はうまく伝わりません。

ライブ配信の内容だけではなく、配信環境や機材などにも気をつけましょう。

配信データの分析をする

ライブ配信後には分析をおこない、今後の配信に活かすことも大切です。

ライブコマースは、中長期的なライブ配信と事業の運用により成果がでるものです。したがって、ライブ配信を続けながら改善を積み重ね、視聴者がより見たい、商品を購入したいと思う配信にすることが求められます。

ライブ配信の視聴者数やコメントの内容、購入単価、購入率、購入された商品の傾向、離脱率、リアクション数などを分析し、課題を改善する手立てを考えましょう。「ライブ配信→分析→改善」のサイクルを回し、ライブコマースを成功に近づけていくことが重要です。

ライブコマースの日本での成功事例を紹介

ライブコマースの日本での成功事例を紹介

最後に、日本で成功を収めたライブコマースの事例を紹介します。今回は「HandsUP by 17LIVE」を利用した企業の例をもとに見ていきましょう。

①Hyundai Mobility Japan

世界的な自動車メーカーであるHyundai Mobility Japanは、ライブコマースを利用して成約件数の増加に成功しています。Hyundai Mobility JapanはEV車の販売台数向上のため、2022年10月にライブコマース「Hyundai IONIQ 5 ライブショッピング」を実施しました。

Hyundai IONIQ 5 ライブショッピングは、ライブコマースの特徴である視聴者との双方性のコミュニケーションを活かして「リアルタイムQ&A」の時間を設けるなど、顧客とのコミュニケーションを深めることに重点を置いたライブ配信です。

このライブ配信では、1時間という短い時間のなかで3台を販売し、新規見積の申し込みは10件という成果を得られました。

②株式会社アイスタイルリテール

日本最大級の化粧品・美容の総合情報サイトである「@cosme(アットコスメ)」の企画・運用をおこなうアイスタイルリテールも、ライブコマースを導入しています。

ロイヤルティの高いファンを獲得・育成することを目的に、公式通販サイト「@cosme SHOPPING」において54時間限定のスペシャルイベントであるライブコマース「@cosme BEAUTY DAY」を開催しました。

54時間という長丁場のライブ配信であるため、イベントの後半で盛り上がりに欠けることがないよう、美容製品販売の接客をデジタルで体験できる企画などを実施。その結果、平均視聴完了率は90%を超え、商品のスムーズな購入導線を確保したことにより、Webコンテンツと比較して6倍以上の購入意欲を獲得するに至りました。

③株式会社ファンケル

無添加化粧品メーカーの株式会社ファンケルも積極的にライブコマースを導入している企業です。コロナ禍により顧客と直接コミュニケーションをとりにくくなったことから、既存顧客とのタッチポイント強化や顧客のファン化促進のため、2020年7月からライブコマース「ファンケル ライブショッピング」を開始しています。

ファンケル ライブショッピングでは、美容・健康に関する情報や商品情報を発信。3年間で計145回の配信を実施し、総視聴者数は約52万人に達しました。同配信は、配信後のアンケート結果をもとにライブ配信の改善に努めていることもあり、視聴者から「楽しみながら視聴できる」とよい評価を得ています。

ライブ配信により、視聴者の購買頻度は非視聴者と比較して約15%高まり、大きな効果を得られました。また購入者のうち、新規購入の割合が最大で7割に達しています。

日本のライブコマースの市場規模は今後も拡大が見込まれる

日本のライブコマースの市場規模は今後も拡大が見込まれる

日本において、ライブコマースの市場規模は拡大を続けている状況です。市場規模は2020年時点で140億円ですが、2021年に314億円規模に拡大し、2023年には約700億円、2024年には約1,000億円にまで急伸すると予測されています。

コロナ禍によるライブコマースへのニーズ上昇や有名企業のライブコマース導入、大手SNSのライブコマースサービスの提供開始などが追い風となってライブコマースの認知度が上がれば利用者が増え、市場規模は今後さらに拡大していくでしょう。