ライブコマースの市場規模とは?日本・中国・アメリカの例も紹介
新しいオンライン販売の形として注目されている「ライブコマース」の中国における市場規模は、2021年に1.2兆元(約25兆円)にまで達しています。それに追随する形でアメリカでもライブコマースの市場規模が拡大しつつありますが、日本での動向が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中国やアメリカのライブコマースの市場規模について解説するとともに、日本での市場規模や今後の展望予想などについても詳しく解説します。
EC業界で注目の「ライブコマース」とは?
ライブコマースとは、ライブ配信とEC販売を組み合わせた新しいオンライン販売の形を指します。動画配信を通じて、ユーザーはリアルタイムで商品やサービスのデモンストレーションを視聴できます。
さらに、チャット機能を活用して、配信者に直接質問をしたり、リアクションをもらえたりと、従来のEC販売ではなし得なかった双方向のコミュニケーションが可能な点が大きな特徴です。一方、消費者の立場からは、商品の使用感がよりイメージしやすく、詳細な情報を入手できるというメリットがあります。
ライブコマースは、ファッションや美容、家電製品などを中心にさまざまな商品ジャンルで活用され、EC業界で近年大きな注目を集めている販売形態なのです。
世界におけるライブコマースの市場規模
ライブコマースの先進国といわれる中国や、それに追随するアメリカにおけるライブコマース市場はどのようになっているのでしょうか。ここからは、世界におけるライブコマースの市場規模や売上動向について解説します。
中国での市場規模
中国でライブコマースが始まったのは、2016年ごろといわれており、以来、市場は急速に拡大してきました。現在では、もはや日常的な買い物の手段の一つとして広く普及しています。
2020年には9,610億元(約19兆2,200億円、1元=20円)だった中国のライブコマース市場は、翌2021年には1兆2,012億元(約24兆240億円)にまで拡大しました。さらに、その後も成長が続くとされ、2025年には2兆1,373億元(約42兆円)にまで達すると予想されています。
また、中国国内でのライブコマースの利用者数も拡大しており、中国インターネット情報センター(CNNIC)発表の「第48回中国インターネット発展状況統計報告」によると、利用者数は2021年6月時点で3億8,400万人に達しています。これは中国国内のインターネット利用者全体の38.0%にあたる数字です。
中国でのライブコマース急拡大の背景には、大手EC企業の参入があります。アリババ傘下の中国最大のオンラインマーケットプレイスである淘宝(タオバオ)は、2016年にライブコマースを導入しました。さらに淘宝と並ぶ2大ECモールの京東(JD.com)のほか、新浪微博(Weibo)や抖音(TikTok)といったSNS系のプラットフォームも次々とライブコマースを導入し、巨大な売上を形成しています。
中国のライブコマースの売上動向
では、中国のライブコマースではどのような属性の利用者がおり、どういった商品が売れているのでしょうか。「第48回中国インターネット発展状況統計報告」をもとに、中国のライブコマースの売上動向について見ていきましょう。
まず、中国のライブコマース利用者の性別は、女性が55.3%と半分以上を占めています。また、年代別では21~30歳が58.1%と最も多いボリュームゾーンとなっており、続いて多いのが20歳以下の20.0%、31~40歳の16.8%と続き、40歳以下の占める割合が全体の95%を占めています。つまり、ライブコマースはとくに若い年齢層の女性に多く利用されている傾向があるといえるでしょう。
売上商品別では、レディースアパレルが最も多く(27.6%)、ついで食品とバッグ類(それぞれ19.6%)、化粧品・スキンケア用品(14.6%)、メンズアパレル(12.6%)などが上位に入っています。
中国のライブコマース事情については、以下の記事でも詳しく解説しています。
中国ライブコマースがアツい!最新の市況や成功事例で知る売上拡大のヒント
アメリカでの市場規模
アメリカは、中国に次ぐライブコマース先進国です。アメリカのライブコマースのブームは2019年ごろから始まりました。その後2020年の新型コロナウイルス感染症拡大によって、さらに認知度が高まり、現在に至るまで拡大を続けています。
ドイツの調査会社スタティスタの発表によると、アメリカのライブコマースの市場規模は2021年で110億ドル、2022年には170億ドルに達し、2024年には350億ドルにのぼると見込まれています。
アメリカのライブコマースの動向
アメリカにおいても、大手ECモールが続々とライブコマース市場に参入しています。
Amazonでは、ライブコマース用のチャンネル「Amazon Live」にて連日20件以上のライブ配信がされているほどです。インフルエンサーによる配信が多く、主な商品ジャンルはファッション、化粧品・スキンケア用品、家電やおもちゃなどが挙げられます。
一方、ウォルマートは「Walmart Shop Along」というサイトでライブコマースを導入しています。月に1~2回ほど、GAPなどの提携ブランドの商品を紹介しています。
日本におけるライブコマースの市場規模の現状
次に、日本におけるライブコマースの市場規模について見ていきましょう。
日本では2017年ごろからライブコマースが浸透し始めましたが、2023年現在、中国やアメリカほど普及は進んでいません。MMD研究所が実施した調査によると、2021年時点で「ライブコマース」という言葉を認知している人は43.2%と全体の半分以下という結果でした。
また、ライブコマースの配信コンテンツの視聴経験がある人は12.7%で、さらにその中で購入に至った人は5.8%とわずかです。
しかし、日本においてライブコマースを含めた配信市場は成長を続けています。株式会社サイバーエージェントが他共同会社と行った調査によると、日本における配信市場規模は2023年に700億円以上、2024年にはおよそ1,000億円に到達すると予測されています。
日本での今後のライブコマースの展望
前述のとおり、日本でのライブコマースの認知度はまだ高くはありません。
しかし、業界によっては活発にライブ配信を行っているところもあります。とくにアパレル業界では、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を機に、人気の高い企業が次々とライブコマースを導入し、他の業界に先駆けて市場全体で盛り上がりを見せています。
アパレル以外で売上を伸ばしている代表的なジャンルの一つが、メンズ化粧品です。実店舗に化粧品を買いにいくのは抵抗がある男性も、ライブコマースであれば人目を気にせず、気軽に化粧品を購入できることから、今後も売上拡大が期待されています。
さらにFacebook、Instagram、 Twitter、TikTokといった大手SNSが次々とライブコマースに参入したことも市場拡大の後押しとなっています。国内でのこれらのSNS利用者は約8,000万人にものぼるため、ライブコマースの利用率もさらに高まっていくと予想されるでしょう。
ライブコマースが注目されている3つの理由
ライブコマースが注目されている主な理由は3つあります。それぞれの理由について詳しく解説していきます。
ライフスタイルの変化によるもの
ライブコマースが注目されている一つ目の理由は、消費者のライフスタイルの変化です。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、誰もが外出を制限され、自宅にこもる生活を強いられたのは記憶に新しいところでしょう。
コロナ禍をきっかけとして、従来以上にソーシャルメディアやオンラインコミュニケーションツールが利用されるようになり、そして多くの人々がインターネットを通じて買い物をするようになりました。そこで消費者が自宅にいながら実店舗さながらの購入体験が可能なライブコマースに注目が集まったのです。
現在はコロナ以前の生活に戻りつつありますが、利便性に優れたライブコマースは今後ますます発展していくことでしょう。
デジタル化の推進によりライブ配信がより身近になったため
二つ目の理由として、ライブ配信がより身近な存在になったということが挙げられます。
近年、スマートフォンなどのモバイルデバイスが急速に普及したことで、情報源がテレビや新聞などの従来型のメディアからソーシャルメディアなどのインターネット情報に移り変わっています。さらに、SNSもより身近なものとなり、幅広い世代が利用するようになりました。
著名なSNSでも次々とライブ配信機能が導入され、ライブ配信や視聴がますます身近なものとなった今、ライブコマースもさらなる市場拡大が期待されています。
EC販売でのデメリットの解決が期待されるため
三つ目の理由は、EC販売でのデメリット解決が期待できるためです。
消費者にとって、ECは手軽に利用できる一方で、実際に商品を手に取れない不安がつきものです。しかし、ライブコマースでは、配信者が自分に代わって商品を手に取り使用感を教えてくれるうえに、チャット機能を活用してリアルタイムで視聴者の質問に答えてくれます。
こうした配信者と視聴者の双方向のコミュニケーションによって、商品の魅力をより掘り下げて紹介したり、視聴者が持つ商品への疑問を解決したりすることが可能です。
ライブコマースは、企業にとってEC販売の手軽さと対面販売の双方向性という両者のメリットを併せ持った販売方式といえます。このようなライブコマースの特徴によって、オンラインショッピングに抵抗感がある人の購入ハードルを下げるということも期待されているのです。
日本でライブコマースを成功させるためのポイント5つ
日本でライブコマースを成功させるためには、配信者や商品の選定を含めた企画内容、配信中や配信終了後の対応など、さまざまな観点からの工夫が必要です。ここでは、ライブコマースを成功させるための5つのポイントについて詳しく解説します。
配信者を慎重に選定する
ライブコマースを成功させるための一つ目のポイントは、ライバーとも呼ばれる配信者の選定です。
カメラの前で商品を魅力的にPRし、視聴者から届くコメントに即座に回答する配信者には、臨機応変に対応できる高度なトーク力が不可欠です。とくに配信者に社員を起用する場合は、ある程度の時間をかけたトレーニングや入念なリハーサルを行うべきでしょう。
社員ではなく、インフルエンサーやタレントを配信者として起用するのであれば、その人のファン層が自社商品のターゲットとマッチするかを重視して、慎重に人選を行うことも大切です。例えば、20代女性をターゲットとする商品の場合は、同じく20代女性のファンが多いインフルエンサーやタレントを配信者として起用するといった対策が必要です。
ライブコマース向きの商品を選ぶ
商品の選定もまた、ライブコマースの成功における重要な要素です。配信を企画する際には、その商品がライブコマース向きかどうかを必ず検討のうえ、選ぶようにしましょう。
例えば、ファッションやグルメ、コスメ、日用品などのジャンルの商品はライブ配信との相性がよく、ライブコマースにおける定番商品です。とくに、近年ライブコマース市場で売上を伸ばしているジャンルが男性向けコスメですが、これは店頭での購入に抵抗のある男性ユーザーの心理を上手についているのが成功の要因といえるでしょう。
さらに、ライブコマースの主要ユーザーは若い世代であるため、健康サプリや健康グッズなどシニア向けの商品は集客が期待できず、ライブコマースには向かないといえます。
配信クオリティ・時間設定にこだわる
ライブ配信を行う際には配信クオリティや配信時間の設定にもこだわりましょう。そもそも視聴者の多くは商品を購入するためではなく、配信自体を見る目的でライブを視聴します。リピーター獲得のためにも、何より視聴者が楽しめるコンテンツ作りをすることが大切です。
また、配信時間の長さも考慮すべきポイントです。配信時間が短すぎると商品の魅力を十分に伝えきれなかったり、集客しきれないまま終了したりと、中途半端な配信になってしまう可能性があります。
とはいえ、反対に配信時間が長過ぎると視聴者が飽きて離脱してしまう可能性があり、適切とはいえません。
どのくらいの配信時間が適切かは扱いたい商品によっても異なるため、リハーサルや配信を重ねる中での調整が必要です。
視聴者との交流も大切にする
ライブコマースの特性の一つである視聴者とのコミュニケーションも、配信を成功させるために大切な要素です。ライブ配信限定のイベントを開催したり、チャット機能を活用して視聴者のコメントに回答したりするなど、視聴者との交流を積極的に行うことでエンゲージメントを高めることにつながり、自社商品のファン獲得が期待できます。
ライブコマースの最終目的は視聴者に自社商品を購入してもらうことですが、それを前面に出してしまうと視聴者の興味はそがれてしまいます。
ライブコマースでは、商品の購買促進よりも、まず視聴者にライブ配信そのものを楽しんでもらえるように心がけましょう。そうすることにより、中長期視点では視聴者数の獲得や売上の拡大につながるはずです。
配信後のデータ分析を行う
ライブ配信が終了したら内容を振り返り、データ分析を行いましょう。
配信中は視聴者が自社商品に関する多くの質問や感想をコメントしてくれます。これらの忖度のない意見は、自社商品やサービスの品質を向上させていくうえでの貴重なヒントとなるはずです。
また、配信終了後には、配信中に寄せられた視聴者からのコメントや集客数、購入件数、購入された商品の傾向などを細かく分析することでライブ配信の効果を測定できます。分析したデータを今後の商品選定や配信に活かしていきましょう。
日本でのライブコマースの成功事例
日本のライブコマース市場では、具体的にどのような企業が参入し、どのような商品を販売しているのでしょうか。ここでは、17LIVE株式会社が提供するライブコマースサービス「HandsUP」を活用した企業の成功事例を3つ紹介します。
①Hyundai Mobility Japan様
最初に紹介するのはHyundai Mobility Japan株式会社様によるライブコマースの成功事例です。同社では電気自動車「IONIQ 5」の販売台数向上を目的とした初のライブコマース「Hyundai IONIQ 5 ライブショッピング」を2022年10月に実施しました。
本配信のコンセプトは、今注目されている電気自動車のことをより深く知ってもらい、HyundaiブランドやIONIQ 5の世界観を体験してもらおうというものです。
具体的には以下のような内容が配信されました。
・車両紹介とリアルタイムQ&A
・V2L機能を使ったクッキングなど実用シーンの紹介
・早期納車可能な車両の紹介など特典の紹介
その結果、わずか1時間の配信で3台の販売に成功。さらに10件の新規見積り申し込みを獲得するという好成績を収めました。
②株式会社アイスタイルリテール様
二つ目は、「@cosme」の企画・運用を行っている株式会社アイスタイルリテール様の成功事例です。@cosmeは、日本最大級の美容情報サイトおよびオンラインコスメショッピングサイトです。
同社では、3日間にわたるスペシャルイベント「@cosme BEAUTY DAY」を実施してきましたが、初日以降が盛り上がりに欠けてしまうこと、目玉商品以外の販売促進などに対して課題を抱えていました。
そこで、自社の美容部員の接客をオンラインで体験できる企画を立案し、ライブコマースの実施に至りました。この配信による平均視聴完了率は90%を超え、事後アンケートによるとWebコンテンツと比較して6倍以上にものぼる高い購入意欲の獲得に成功しました。
③株式会社再春館製薬所様
最後は株式会社再春館製薬所様の成功事例を紹介します。
同社は、生涯基礎化粧品「ドモホルンリンクル」のほか、医薬品・医薬部外品・食品などの製造から販売まで行っている会社です。
そんな同社では、トライアル体験ユーザーの新規獲得を目的にライブコマースを実施しました。二人の社員による対話形式のライブ配信によって、セールス架電を行うときと同じ稼働リソースで多くの売上を記録した事例です。
また、事前アンケートで記載された購入予定商品ではなく、配信内でおすすめされた商品が購入される事例が多数あり、ライブ配信によってユーザーの行動を変えられることの実証にもなっています。
日本でのライブコマース市場は今後も拡大が期待されている
ライブコマースは、今後も成長が期待される市場です。日本においてはまだ認知度が低く発展途上ではあるものの、参入企業は増加しており、今後も市場規模の拡大が予想されています。
これからライブコマースへの参入を考えているのであれば、導入実績No.1(※)のライブコマースプラットフォーム「HandsUP」の活用をぜひご検討ください。HandsUPを提供するのは、300社以上のライブコマースを支援してきた株式会社17LIVEです。
HandsUPは独自のツール提供はもちろん、ライブコマースの導入から定着まで支援する伴走型ソリューションサービスです。貴社におけるライブコマースの成功を強力にサポートしますのでぜひ導入をご検討ください。
※同社調べ