中国越境EC市場の最新動向と攻略法|中国EC市場の特徴も解説
世界の越境ECの市場規模は拡大を続けており、中でも中国のEC市場は世界1位のシェアを誇ることから、中国の越境EC市場に注目が集まっています。
今後、中国の越境EC市場への参入を検討している方の中には、中国の越境EC市場の動向が気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中国越境ECの最新動向と攻略法を解説するとともに、中国EC市場の特徴や、中国へ越境ECをする際の注意点を紹介します。
越境ECの世界の市場規模
経済産業省の「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、越境EC市場の規模は、2021年には7,850億USドルでした。また、2030年には7兆9,380億USドルにまで拡大する見込みで、年平均成長率は約26.2%と推計されています。
参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」
この高い成長率からもわかるように、越境ECの市場は今後も拡大していくことが予想されています。
越境ECは、消費者と事業者の双方にメリットがあります。消費者は、ECプラットフォームを通じて世界中の商品に容易にアクセスできるため、限定品やより安価な商品を手に入れることが可能です。
事業者にとっては、国内市場だけではなく、世界市場を視野に入れたビジネス展開が可能となります。越境ECにより、新たな顧客層にアプローチでき、売上を伸ばす機会が増えるでしょう。
中国のEC市場の世界シェア
2022年における、EC市場の世界シェアランキングは次の表のとおりです。
順位 | 国名 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 中国 | 50.4% |
2位 | 米国 | 18.4% |
3位 | イギリス | 4.5% |
4位 | 日本 | 3.1% |
5位 | 韓国 | 2.5% |
出典:令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省
中国のEC市場は50.4%と、世界市場の半数以上のシェアを占めており、他国と比較しても中国市場の規模は突出しています。
さらに、米国を加えると上位2か国で世界の68.8%のシェアを占め、中国と米国だけで世界市場の約7割を占めているのが現状です。
また、中国市場における日本と米国からの購入規模は5兆68億円にも達し、日本経由の市場規模は2兆2,569億円と50%程度となっています。巨大な中国市場の中でも、比較的大きな割合を占めているのが日本経由の市場ということがわかります。
中国の越境ECの市場規模
デジタルマーケティングを中心とした商業に関する市場調査会社eMarketerによると、2022年の中国での越境EC市場規模は2兆8,790億USドルで、前年比9.1%の増加を示しています。
将来に向けても、中国の越境EC市場は着実に成長する見通しです。2026年には、市場規模が3兆9,850億USドルに達し、前年比7.0%の増加が見込まれています。さらに、オンラインショッピングの利用人口も中国が世界で1位です。
このように、中国のEC市場はデジタルマーケティングを中心とした商業で重要な位置を占めており、今後も成長が続くと予想されています。
中国の越境ECの動向と対策
中国の越境EC市場をターゲットとする日本企業は、市場動向を事前にしっかり分析しておく必要があります。
ここでは、経済産業省の「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」をもとに、中国の越境EC市場の動向と、日本企業がおこなうべき対策について解説します。
中国での越境ECサイトのシェア
まずは、中国内の越境ECサイトのシェアを確認していきましょう。
会社 | 割合 |
---|---|
アリババグループ(Alibaba) | 42.7% |
京東(JD.com) | 19.1% |
拼多多(ピンドウドウ:Pinduoduo) | 15.5% |
その他 | 22.7% |
出典:令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省
アリババグループは、2017年には61.2%のシェアを持っていましたが、2022年には42.7%まで減少しました。さらに、今後もシェアの減少が続くと予想されています。その理由として、他のEC事業者がSNSやライブコマースなどの新たなプラットフォームとの連携を強化し、市場シェアを拡大していることが挙げられます。
中国市場は競争が激しく、従来の大手企業がシェアを減少させる一方で、新興プラットフォームが台頭しているのが現状です。
中国での越境EC利用者の年齢層
中国の越境EC利用者の約60%は、「25歳〜44歳」の年齢層という結果でした。また、比較的若い世代でもある「18歳〜24歳」の年齢層でも、15%が越境ECを利用しています。若い世代は新しいテクノロジーやトレンドに敏感であり、越境EC活用への抵抗がありません。
特に中国ではインフルエンサー市場も大きく、ライブコマースなどを活用して商品購入をする人が多い傾向にあります。中国の越境EC市場へ参入するうえでは、若い年齢層をターゲットに、インフルエンサーやSNSを活用したマーケティング戦略が重要となるでしょう。
中国の越境EC利用時のデバイス
中国の越境EC利用時のデバイスに関するアンケートでは、スマートフォンを利用した割合が96%と高い数字が示されました。続いて、ノートパソコンでの利用が51%となっています。
今後もスマートフォンを利用した越境ECの拡大が予想されるため、越境EC事業者はスマートフォンでの閲覧・購入を主体としたサイト構築が必須となるでしょう。
中国の越境ECの決済方法
中国の越境ECでの決済方法は多岐にわたりますが、最も使われているのはアリババグループが提供するAlipay(アリペイ)です。Alipayを利用している人は47%と圧倒的なシェアを誇り、続いてクレジットカードが43%となっています。
Alipayは中国国内で広く普及しており、中国からの購買者が越境ECサイトで買い物をする際には、Alipayを利用することが一般的です。
また、Alipayでは売上が円建てで入金されるため、為替変動のリスクが少なく、比較的導入しやすいメリットもあります。
中国の越境EC利用者の商品の探し方
中国の越境EC利用者の多くは、商品を探す際にSNSを活用しています。商品の見つけ方を調査したアンケート調査では、1位がSNSの65%、ついで「友人/家族のすすめ」が55%という結果になりました。
SNSの活用が広がっている背景には、中国の小売市場が偽物や誇大広告にあふれ、品質が信頼できないことが挙げられます。企業の広告ではなく、インフルエンサーや他のユーザーの評価を参考にして購入する消費者が多いようです。
そのため日本企業としては、SEO対策だけではなく、SNSでの広告戦略を重視することも重要です。SNSを通じて消費者に直接アプローチし、信頼度の高い情報を提供することで、中国の越境EC市場での競争力を高められます。
中国で越境ECをしてでも日本の製品が欲しい理由
日本の製品が欲しいと考える理由の調査結果では、52%の人が「国内にないものを購入できること」を挙げています。続いて、「正規品等、信頼できる先から購入できる」が44%、「高品質である」が41%です。
この結果から、日本の製品に対して高品質で信頼性が高いイメージがあることがわかります。日本ならではのオリジナリティを出し、高品質な製品を提供することで、顧客を獲得しやすくなるでしょう。
参入前に知っておきたい中国EC市場の3つの特徴
越境ECを成功に導くためには、中国EC市場の特徴を理解しておかなければなりません。参入前に確認しておきたい、中国EC市場の特徴を3つ紹介します。
ライブコマースによる商品購入の人気が高まっている
ライブコマースとは、ライブ配信とEC(電子商取引)を組み合わせた言葉です。インフルエンサーなどが動画配信を通じて商品を紹介し、視聴者がその場で商品を購入できる仕組みを指します。
視聴者はライブ配信を通じて商品の特徴や魅力をリアルタイムで確認し、インフルエンサーの信頼性や専門知識に基づいた情報を受け取れます。その場で購入手続きを完了できるため、購入につながりやすいのが特徴です。
中国ではこのライブコマースの人気が高く、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーが実際に商品を紹介して、ライブ視聴者が購入する流れが一般化しています。
そのため、日本企業が参入する場合は、ライブコマースの活用も検討する価値があるでしょう。
関連記事:ライブコマースにおけるKOLとは?KOCやインフルエンサーとの違いについて解説
キャッシュレス決済が普及している
中国では、クレジットカードよりも、AlipayやWeChat Payなどのキャッシュレス決済サービスの利用が主流です。スマートフォンアプリを通じて直接銀行口座やクレジットカードと連携し、支払いをおこなえます。
中国では、お年玉やお祝い金などの送金もキャッシュレス決済でおこなわれるほど普及しています。そのため、中国のEC市場への参入を考える際には、キャッシュレス決済サービスの導入が欠かせません。
中国の3大企業が市場を引っ張っている
中国のEC市場は、主にアリババ・京東・拼多多の3大企業によって牽引されています。特に、アリババグループは影響力が大きい企業です。
アリババは中国最大のECプラットフォームであり、その規模や知名度は他を圧倒しています。そのため、アリババグループが運営するECへの参入は、知名度の向上や売上拡大を見据えるうえで有効な戦略となるでしょう。
一方、近年では新興プラットフォームの台頭も見逃せません。例えば、拼多多は2020年12月末時点でアリババを抜いて利用者数で1位となるなど、急速な成長を遂げています。
中国へ越境ECする際に注意すべきポイント
中国へ越境ECする際には、法律や販売ルールなどを確認しておかないとトラブルにつながりかねません。ここからは、中国越境ECにおける注意点を4つ紹介します。
中国の電子商取引法の内容を必ず守る
中国へ越境ECする際には、中国の電子商取引法を必ず守りましょう。電子商取引法に違反すると罰則が科されます。営業許可証の取得や、商品説明を中国語で提供する義務、中国法人の登録設立などについて理解しておくことが重要です。
さらに、中国の電子商取引法には、抱き合わせ販売での注意喚起や、商品説明のない食品の販売制限など、細かな決まりが定められています。
その他、知的財産権の侵害にも注意しましょう。知的財産権を侵害している商品を放置していると、EC経営者に対する制裁金が科されるおそれがあります。
商品ごとの販売ルールを確認すること
商品ごとに決められている販売ルールの確認も欠かせません。特に、化粧品や食品などの商品には、輸入に関するルールが細かく定められているため注意が必要です。
具体的には、原産地証明書や成分表の提出が必要な場合があります。また、中国語ラベルの作成や、国家関連部門による許認可の事前取得も必要です。これらの手続きをおこなわないと、商品の輸入が制限されたり、罰金を科せられたりする可能性があります。
商品ごとの販売ルールは常に変化するため、定期的に最新の情報を確認することが重要です。業界団体や専門家のアドバイスを受けて、迅速かつ正確な情報を入手しましょう。
EC取引にかかる税金を確認する
中国へ商品を輸出する際には「関税」「行郵税」「増値税」などがかかります。商品の種類や価格によって税率が異なるため、事前に確認しておきましょう。
税金の種類 | 内容 |
---|---|
関税 | 中国への輸入品にかかる税金 |
行郵税 | 郵送貨物・携帯貨物に対してかかる税金 |
増値説 | 物品の販売や役務の提供、海外から商品を輸入する際に発生する税金 |
また、自社商品が、国務院が公開している「ポジティブリスト」に記載されているアイテムかどうかも確認しておくことが大切です。ポジティブリストに掲載されている商品は、優遇措置を受けられるため、企業の税負担が抑えられます。
中国で普及している電子決済を導入する
先述したとおり、中国では日本以上にキャッシュレス決済が普及しており、特に多く利用されているのがAlipayとWeChat Payです。
近年人気が高まっているWeChat Payは、プラットフォーム上での機能が豊富で、プロモーション活動もできるというメリットがあります。顧客の利便性を高めながら、商品やサービスの知名度を向上させることが可能です。
さらに、WeChat PayやAlipayは、プラットフォーム上でのECサイト構築も可能です。ECサイトの運営や顧客管理を一元化できるため、管理コストの低減や効果的な集客が可能となるでしょう。
決済から商品の購入までを一貫してプラットフォーム上で完結でき、購買体験がスムーズになることで、顧客満足度の向上にもつながります。
中国越境EC市場は今後も拡大が期待される
中国のEC市場の規模は、全世界の半数以上を占めており、他国と比較しても中国市場の巨大さは特筆すべきポイントです。今後も市場規模の拡大が期待されているため、早い段階で越境ECに参入することで大きな成果を得られる可能性があります。
中国の越境ECサイトで成功するためには、上位3つのECサイト事業者の特徴を理解し、活用していくことが重要です。また、中国ではインフルエンサーの紹介で商品購入をする人が多い点や、SNSを活用した商品プロモーションが重要となります。
中国で人気の「ライブコマース」の活用も有効な手段のため、中国の越境EC対策として検討してみてはいかがでしょうか。