マーケティングDXとは?メリットや成功のヒントを紹介

2024年2月6日

マーケティングDXとは、マーケティング分野に対し、デジタル技術を用いて業務改革をおこなうことです。

しかし、マーケティング責任者としてDXによる業務改革を進めたくとも、「マーケティングDXが具体的にどのようなものなのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、マーケティングDXの概要やメリット、実施における課題を紹介します。また、成功させるためのポイントについてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

マーケティングDXとは

マーケティングDXとは

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称であり、「デジタルによる変革」という意味の言葉です。

マーケティングDXとは、ITツールやAIを導入して市場調査や商品開発、広告宣伝や効果検証といったマーケティングプロセスに変革を起こし、新たな価値を創出することを指します。

現状におけるマーケティングプロセスの改善や効率化といった延長線上にあるものではなく、デジタル技術を活用して新しいプロセスに刷新するものです。

マーケティングDXを実施すれば、企業の競争優位性確保や、既存のマーケティングプロセスでは生み出せない新たなビジネスモデルの創出も期待できるでしょう。

マーケティングDXとデジタルマーケティングの違い

マーケティングDXとデジタルマーケティングの違いは、目的か手段かということです。

マーケティングDXは、マーケティングプロセス全体を変革することを指します。一方、デジタルマーケティングはデジタル技術を使用したマーケティング施策のことであり、マーケティングDXを実行するための手段の一つに過ぎません。

デジタルマーケティングの例としては、Web広告や検索エンジン最適化(SEO)などが挙げられます。これらはマーケティング手法の一つであり、業務プロセスを変革するものではありません。

デジタルマーケティングなどさまざまなマーケティング手法を用いながら、IT技術を駆使し、業務全体の改革をおこなうのがマーケティングDXなのです。

マーケティングDXが必要な理由とは

マーケティングDXが必要な理由とは

DXが重要視されている理由は、経済産業省が発表した「2025年の崖」という問題にあります。

多くの企業では、成長戦略や競争力強化を図るうえでDXの必要性を理解しています。しかし、既存システムが事業部門ごとに構築されていたり、過剰なカスタマイズによって複雑化・ブラックボックス化したりしているために、社内でデータをうまく活用できていないケースが多いです。

そして、このような既存システムの問題を解決するには業務の見直しや改革が必要ですが、現場での抵抗も大きく、うまく推進できていないのが現状です。

政府は、このままではDXを実現できないだけでなく、2025年から2030年にかけて最大12兆円もの大きな経済損失が生じると予想しています。

これが「2025年の崖」であり、この問題を乗り越えるためにも、企業は早急にマーケティングDXを推進する必要があるのです。

参考:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開(経済産業省)

マーケティングDXの実施で得られる恩恵

マーケティングDXの実施で得られる恩恵

マーケティングDXの実施で得られる恩恵としては次の5つが挙げられます。

・データに沿った客観的な判断ができる
・業務の効率化ができる
・ビジネスモデルの刷新ができる
・質の高い顧客体験を提供できる
・PDCAを早く回せる

ここでは、それぞれの項目ごとに解説します。

データに沿った客観的な判断ができる

マーケティングDXを推進することで、そのプロセスで蓄積したデータを活用でき、客観的な判断がおこなえるようになります。

例えば、アポイントメントや商談、契約、解約といった顧客とのやり取りをデータとして蓄積し、MAツールを用いることで客観的な評価や分析が可能です。それにより、顧客の購買意欲や成約の可能性も客観的に判断できるでしょう。

営業担当者の個人的な判断に依存することもなくなるため、業務の属人化も防げます。

データに沿った客観的な根拠を得られることで、スピード感を持った素早い意思決定もできるようになるでしょう。

業務の効率化ができる

マーケティングDXの実施は、業務の効率化も期待できます。

マーケティングに付随する業務は、データの収集や処理といった単純作業が多いものの、その量は膨大であることから多くの時間と労力を要します。

データ処理をデジタル化すれば、これらの単純作業から解放されるとともに、ヒューマンエラーをなくすことにもつながるでしょう。

さらに、効率化によって、より付加価値の高い施策に多くのリソースを当てられるため、生産性の向上も期待できます。

ビジネスモデルの刷新ができる

マーケティングDXの実施により、オンライン・オフラインの両方から蓄積した大量のデータを分析することが可能です。

その結果、市場や顧客のニーズの変化に迅速に対応できるようになり、ときには新たなビジネスモデルが生まれることもあるでしょう。

革新的なビジネスモデルを展開できれば、競合他社との差別化が可能となり、業界内での地位の向上も期待できます。

質の高い顧客体験を提供できる

マーケティングDXの実施により、質の高い顧客体験(CX)を提供できます。

近年は、商品やサービスの供給過多により、顧客ニーズの多様化が進んでいます。その結果、ユーザーは商品やサービスそのものの価値に加えて、購入によって得られる「満足感」や「喜び」なども重視するようになりました。

マーケティングDXを実施すれば、顧客体験の大きな変革も期待できます。

例えば、来店することなくAIに質問をして商品を購入できるアプリや、アプリでスキャンしただけで購入できるサービスなどを新たに提供することにより、顧客体験を高められるでしょう。

トレンドの変化にあわせて柔軟に商品やサービスを改良していくことにより、質の高い顧客体験を提供し続けられます。

PDCAを早く回せる

データ処理のデジタル化によって作業効率が向上すると、PDCAを早く回せるようになります。その結果、業務改善を効率的に進められるほか、新たなビジネスチャンスをつかみやすくなるでしょう。

常に業務での課題やチャンスを見つけ、新たな戦略を立案、改善していくことが成功につながります。

マーケティングDXの推進によって生まれた余力を利用し、PDCAを高速で回すことは、企業が生き残るためにも重要なポイントといえるでしょう。

マーケティングDXの実施における課題とは

マーケティングDXの実施における課題とは

メリットの多いマーケティングDXですが、実施するためには解決しなければならない課題もあります。主な課題は次の3つです。

・社内の人材不足
・新システム導入による業務の煩雑化
・業界構造の固定化

ここでは、それぞれの課題について解説します。

社内の人材不足

マーケティングDXの推進が難しい理由として多く挙げられる課題の一つは、社内の人材不足です。IT技術とマーケティングスキルを備えた人材がいなければ、マーケティングDXは推進できません。

しかし、そのような人材を見つけるのは容易ではなく、どの企業においても需要が高いことから簡単には採用できないでしょう。うまく採用できたとしても、また他の企業に流出してしまう可能性もあります。

そのため、人材の確保や育成だけでなく、流出させない環境づくりも大切です。

新システム導入による業務の煩雑化

顧客の購買データや広告解析データ、アクセス解析データなどのマーケティングに関連したあらゆる情報をデジタル化する際、導入するシステムなどを慎重に選ばないと、それらを扱うプロセスが煩雑になる可能性があります。

既存システムとの互換性がないシステムを導入してしまった場合、さらに業務が複雑化し、現場の負担が増してしまうでしょう。

新たに導入するなら、既存のシステムとの親和性が高いツールや、連携できるツールを選ぶほか、研修の実施などサポート体制を整えておくことが大切です。

業界構造の固定化

長年変わらない固定化された業界構造も、マーケティングDXを推進するうえでの障壁となり得ます。

例えば、代理店や小売店を経由しておこなう業種の場合、これまでの関係性を突然変えることは難しいでしょう。DXの実施により、これまでおこなわれてきた取引が消滅するケースも考えられ、代理店などがビジネスモデルの変革に難色を示す可能性もあります。

業界全体での協議や調整が必要な場面も出てくるため、上層部の理解や協力が不可欠です。

担当者任せにするのではなく、上層部が率先して、組織一丸となって推進していくことが求められます。

マーケティングDXを成功させるためのポイント

マーケティングDXを成功させるためのポイント

マーケティングDXを成功させるうえで、押さえておきたい主なポイントは次の4つです。

・経営層の決断を促す
・目的を明確にする
・使いやすいITツールを導入する
・必要に応じて外部と連携する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

経営層の決断を促す

マーケティングDXを推進するためには、従来の企業体質を変えなければなりません。組織や業務プロセスの根本的な見直しが必要になるでしょう。

また、マーケティングDXは一大プロジェクトであるため、まとまった予算や多くの人員が必要です。ツールを導入して終わりといった、一時的な変化で止まらないようにするためにも、経営層に積極的に関わってもらう必要があるでしょう。

目的を明確にする

DXの導入目的を明確にすることも大切です。

目的を明確にし、全社で共有しておかなければ、DXの推進は難しいといえます。部門ごとに目的が異なれば、すれ違いが生じトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

全社員が同じ目標に向かって進むためにも、現在のマーケティングにおける課題を洗い出し、それらの解決策となる目的を明確にしておくことが大切です。

使いやすいITツールを導入する

マーケティングDXの推進には、使いやすいITツールを導入することも大きなポイントとなります。

マーケティングDXの推進に伴い、これまでITツールを使う機会がなかった社員も、ツールを使う頻度が増えるのは間違いないでしょう。しかし、使いにくいツールであれば、導入メリットを十分に感じてもらえず、使われなくなる可能性もあります。

そのため、導入するITツールは、誰にとっても使いやすいものを選びましょう。

事前に社員に試してもらい、感想をフィードバックしてもらったうえで、導入を決めるのもよいでしょう。

必要に応じて外部と連携する

マーケティングDXの推進には、ITについての豊富な知見や高度なスキルが求められます。社内の人材だけでは、マーケティングDXの推進に限界を感じる場合もあるでしょう。

そのため、必要に応じてノウハウを備えた外部からのサポートを受けたり、他社と連携を取ったりすることも大切です。

外部と連携をすることにより、自社だけでは成し得なかったことも実現できる可能性があります。他社の成功事例を参考にしながら、自社でもできないか検討してみましょう。

マーケティングDXを理解して実施しよう

マーケティングDXを理解して実施しよう

マーケティングDXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスの変革をおこなうことです。

うまく推進できれば、業務の効率化やビジネスモデルの刷新を実現できるでしょう。課題やチャンスを発見しやすくなり、新たな戦略も立案しやすくなります。

しかし、人材不足や新規ITツールへの慣れなど、クリアしなければならない課題も多くあります。

マーケティングDXを成功させるためには、経営層が率先して推進し、社員一丸となって進めていくことが大切です。本記事を参考にメリットや課題、成功のためのポイントを深く理解したうえで一つひとつ課題をクリアし、マーケティングDXを成功させましょう。