越境ECで利用できる決済サービスとは?決済サービスの選び方や注意点も解説

2024年10月28日

越境ECとは、国境を越えて商品やサービスを提供するオンラインショップのことで、世界中の消費者にリーチするための重要な手段として注目されています。越境ECで国外の顧客を引きつけ、そのニーズに応えるためには、適切な決済サービスの選択は不可欠です。

そこで本記事では、越境ECで利用可能な決済サービスの種類や、選び方のポイントについて解説します。また、導入時に考慮すべき注意点についても触れていますので、国際的なビジネス展開を成功させるための参考にしてみてください。

越境ECとは?

越境ECとは?

越境ECとは、国境を越えてインターネットを通じて商品やサービスを販売するビジネスモデルです。日本の企業が海外のECモールに出店して現地の顧客を対象に商売をしたり、自社のECサイトを海外向けに制作して取引をおこなったりします。

越境ECを利用することで、特定の地域に限定されず、広い範囲の顧客にアクセスが可能です。現在、日本の越境EC市場は、中国や欧米の大きな市場と比べると小規模ですが、国際市場への参入の重要なステップとして、将来的に大きな成長が期待されています。

技術の進歩とグローバルな経済のつながりが強まる中で、越境ECは日本企業にとってますます重要な戦略的選択肢といえるでしょう。

越境ECの市場規模

越境ECの市場規模

越境EC市場は急速に成長しており、今後もさらに拡大することが予測されています。経済産業省の「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、2021年の時点で世界の越境EC市場は約7,850億ドルでしたが、2030年には約7兆9,380億ドルに達するとの見込みです。

また、日本、アメリカ、中国間の越境EC市場の動向を見ると、総市場規模は3,954億円で、そのうちアメリカ経由が3,561億円、中国経由が392億円を占めています。

越境ECの市場規模については以下の記事でより詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

関連記事:越境ECの市場規模|国別EC市場シェアランキングを紹介

越境ECで利用できる決済方法とは

越境ECにおいて効果的な決済手段の選択は、顧客満足度を高め、国際的な市場での成功を左右する鍵となります。ここからは、越境ECで利用できる決済方法について解説していきます。

クレジットカード

クレジットカードは、越境EC市場で広く利用されている主要な決済手段です。特に、クレジットカードの普及率が高く、大規模ブランドが多い中国やアメリカでは非常に人気があります。

クレジットカード決済の大きな利点は、料金の未回収リスクが低く、安定した収益を見込める点です。しかし、カード情報が漏洩すると不正利用されるリスクもあります。不正利用が発生すると、支払いの取り消しやチャージバックが生じる可能性もゼロではありません。

こうしたリスクを軽減するためには、事業者がセキュリティ対策を強化し、顧客の認証プロセスを厳格にする必要があります。

デビットカード

デビットカードは、直接的な支払い手段として注目を集めています。買い物をすると、その購入金額が即座に関連する銀行口座から引き落とされるため、消費者は自身の資金状況をリアルタイムで確認しながら支払いをおこなえます。

クレジットカードのような後払い方式ではなく、利用のたびにすぐに口座からお金が引き落とされるため、使いすぎを防ぐことが可能です。また、デビットカードは国際的な取引でも広く認められており、多くの国や地域で安心して利用できます。

国内ではまだ普及していませんが、海外でも特にクレジットカードが一般的に使われている地域では、クレジットカードを持たずに同様の決済ができるため、一定の人気があります。

電子マネー

電子マネーは、オンラインや越境ECでのショッピングを安全かつスムーズにおこなうための重要なツールです。電子マネーには、主にプリペイド式とポストペイ式の2種類があります。

プリペイド式の電子マネーは、利用者が事前に現金や銀行口座から電子マネーアカウントに資金をチャージし、その残高を使って支払いをおこないます。一方、ポストペイ式の電子マネーは、商品やサービスを購入した後に、口座から直接料金が引き落とされる仕組みで、利便性が高い決済方式です。

各事業者が提供する電子マネーサービスは異なるため、消費者は自身の支払いニーズや利用状況に応じて適したものを選ぶことができます。プリペイド式は予算管理がしやすく、使いすぎを防ぐことができるメリットがありますが、ポストペイ式は柔軟に支払いができ、緊急時にも対応しやすいので、忙しい人にとって便利です。

第三者支払いサービス

第三者支払いサービスは、消費者と販売者の間に立つ決済プラットフォームを利用する支払い方法です。この方法では、クレジットカード情報や銀行口座情報を直接オンラインショップに提供することなく、安全に取引を完了できます。

消費者は一度、第三者の決済サービスプロバイダーにこれらの情報を登録すれば、以降はそのプロバイダーを通じてさまざまな支払いが可能です。

第三者支払いサービスは国際的に非常に人気があり、特にアメリカでは「PayPal(ペイパル)」が広く利用されています。第三者支払いサービスを使うことで、消費者は自身のプライバシーとセキュリティを守りながら、世界中のさまざまなショップで安心してショッピングを楽しむことができるのです。

代金引換

代金引換は、商品を受け取る際に支払いをおこなう方法です。配送員が商品を届けたタイミングで、その場で料金を支払います。この方法のメリットは、商品を確実に受け取った後に支払いをするため、未配送のリスクがない点です。

ただし、代金引換を利用する際には、商品到着時に必要な金額を現金で用意しておく必要があります。特に国際配送を伴う越境ECでは、通貨の違いや配送の複雑さから、代金引換の利用率は低いです。

しかし、現金決済を好む消費者にとっては依然として重要な選択肢といえます。そのため、代金引換は特定の市場での需要を満たすために、越境ECにおいても重要な役割を果たす決済方法といえるでしょう。

ネットバンキング

ネットバンキングは、インターネットを通じておこなう金融取引の方法です。銀行の窓口やATMに行かなくても、自宅や移動中にPCやスマートフォンを使って簡単に取引をおこなうことができます。これにより、ユーザーは時間と手間を省きながら、さまざまな金融操作をおこなうことが可能です。

特に、中国ではネットバンキングが非常に普及しており、多くの人々が日常的に利用しています。利便性とセキュリティの高さが評価されている決済手段のため、越境ECでも重要な手段です。

また、ネットバンキングは大規模なオンラインショッピングや定期的な支払いにも適しており、ユーザーは自身の銀行口座を直接管理しながら、安全に取引を完了できます。

越境EC先として代表的な2カ国の主要決済サービス

越境EC先として代表的な2カ国の主要決済サービス

越境EC市場での取引が盛んなアメリカと中国に焦点を当て、これらの国々で一般的に利用されている主要な決済サービスを紹介します。各国の決済環境の理解を深めて、より効率的なビジネス展開を目指しましょう。

中国での主要な決済サービス

中国の決済サービス市場では、デジタル決済の利用が急速に拡大しています。特に、Alipay(アリペイ)とWeChat Pay(ウィーチャットペイ)が非常に人気です。

これらのプラットフォームは、日常生活の中で広く利用され、さまざまな商取引で主要な支払い手段となっています。

一方で、クレジットカードの分野では銀嶺カードが広く使われています。銀嶺カードは中国国内だけでなく、国際的にも多くの場所で利用可能です。特に越境ECにおいては、重要な決済オプションとして考慮する価値があります。

決算方式利用割合

Alipay(アリペイ)

47%

クレジットカード

43%

中国銀聯

29%

中国の越境EC市場規模については以下の記事で解説していますので、気になる方は参考にしてみてください。

関連記事:中国越境EC市場の最新動向と攻略法|中国EC市場の特徴も解説

アメリカでの主要な決済サービス

アメリカでは、クレジットカードとデビットカードが広く利用されており、日常の買い物から大規模な商取引までさまざまな場面で使われています。

さらに、PayPalという第三者支払いサービスも非常に人気です。PayPalは国際取引に適しており、高いセキュリティを誇るため、越境ECにおいて信頼性の高い決済手段として評価されています。

決算方式利用割合

クレジットカード

55%

デビットカード

25%

ペイパル

10%

 

 

越境ECにおける決済サービスの選び方

越境ECにおける決済サービスの選び方

越境ECを展開する際には、効果的な決済サービスの選択が成功の鍵となります。そこでここからは、国際的な顧客基盤を引きつけ、維持するために適切な決済手段をどのように選ぶかについて解説します。

自社の商品やサービスに最適な決済方法の選定から、決済代行会社を利用するメリットについて確認していきましょう。

対象国ごとに決済サービスを導入する

越境ECを運営する際には、対象国の消費者がよく利用する決済サービスを導入することが非常に重要です。その国で広く使われている支払い方法を理解し、取り入れる必要があります。国内の統計調査によると、消費者の約75%が希望する決済サービスが利用できない場合、そのECサイトを利用しない可能性があると回答しています。

そのため、越境ECビジネスでは、地域ごとの支払い習慣や好みを把握することが重要です。特に、異なる文化や経済状況を持つ国々でビジネスを展開する場合、地域ごとの消費者行動を理解し、それに適応するのが理想です。

越境ECプラットフォームを設計する際には、各国の市場調査をおこない、最も人気のある決済手段を導入しましょう。これにより、幅広い顧客層に商品を届け、国際市場での売上を増やせる可能性が高まります。

自社の商品やサービスに沿った決済サービスを導入する

各商品やサービスはそれぞれ異なる顧客層をターゲットとしているため、その顧客層が日常的に利用する決済手段を提供することは、顧客満足度の向上や売上増加に直結します。

例えば、高級商品を扱う場合、顧客層がよく使うクレジットカードや特定のキャッシュレス決済サービスを導入すると効果的です。一方、若者をターゲットにした製品では、キャッシュレス決済や即時決済が適しています。

また、地域によっても主流の決済方法は異なります。例えば、アジア市場ではQRコード決済が一般的ですが、欧米市場ではPayPalやApple Payが主流です。自社の商品やサービスに最も適した決済方法を選ぶことは、国際市場での成功にとって重要です。

決済代行会社に依頼する

越境ECビジネスでは、海外市場に対応するために決済代行会社を利用することが一般的です。決済代行会社は、各国の異なる決済方法に精通しており、地域特有の支払い習慣や法規制に対応するサポートを提供します。

決済代行会社を選ぶ際には、コストパフォーマンス、対応するプラットフォーム、提供される決済オプションの多様性などを詳細に比較検討することが重要です。

さらに、安全性や顧客サポートの質も重要な選定基準となります。代行会社がどのように顧客データを保護しているか、セキュリティのレベル、障害発生時の対応の迅速さなど、具体的なサービス内容をよく理解して選ぶようにしましょう。

越境ECの決済で知っておきたい注意点

越境ECの決済プロセスには、為替変動や輸出入関税など、留意すべき多くのリスクと注意点が存在します。国際的な取引をおこなう際に遭遇する可能性のある主な課題と、効果的な対処方法を解説します。

為替変動のリスク

越境ECを運営する際、為替変動は避けて通れない重要なリスクです。

商品の価格を円で設定する場合、為替レートの変動が価格に影響を与えるため、事前に対策を考えておく必要があります。為替レートが変動すると、商品価格が外国通貨で表示された際に予期せぬ値上がりや値下がりが起こり、それが顧客の購買意欲に直接影響してしまうでしょう。

例えば、円高になると海外の顧客には同じ商品が高く感じられ、購買を控える原因となります。一方で、円安になると商品が安く見えるため、販売促進につながる可能性があります。

為替変動に対応するためには、為替レートを定期的に監視し、必要に応じて価格を調整する戦略が効果的です。

商品の輸出入時における関税

各国の関税法規を遵守し、適切に関税を管理することは、越境ECビジネスの成功に直結します。販売する商品の関税率を正確に把握し、それを消費者にわかりやすく伝えることが非常に重要です。

具体的には、商品価格を設定する際に関税の見込み額を考慮し、商品ページに関税がかかる旨とその見込み額を明記するのがよいでしょう。これにより、顧客は購入時に発生する総コストを事前に把握でき、想定外の費用による混乱や不満を避けることができます。

また、関税を計算するためには、商品のHSコード(調和システムコード)が必要です。正確なコードを使用することが重要で、誤ったコードの使用は間違った関税の適用を招き、法的な問題に発展する可能性もあります。

したがって、関税に関する情報は定期的に更新し、国際貿易法規の変更にも迅速に対応する必要があります。

越境ECを展開する際は多様な決済サービスの導入が必須

越境ECを展開する際は多様な決済サービスの導入が必須

越境ECを展開するには、各国の異なる決済手段を理解し、それらをシステムに組み込む必要があります。これは時間と労力を要する作業ですが、成功するためには避けて通れない道です。

また、ライブコマースを利用した越境ECを検討している場合は、17LIVEの「越境ソーシャルコマース支援」の活用もご検討ください。このサービスは、決済から販売、物流までの全工程をワンストップでサポートし、海外販売に必要な総合的な支援を提供します。

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