越境ECの市場規模|国別EC市場シェアランキングを紹介

2024年4月23日

海外ユーザーに向けて、ネットショップで商品を販売する越境ECの事業者は増えつつあります。しかし、越境ECの市場規模やメリット、デメリットなどを知らない方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、日本、アメリカ、中国間の越境ECの市場規模やメリット・デメリットを紹介します。

越境ECとは?

越境ECとは?

越境ECとは、インターネットを通じて、国境を越えて国際的にEC(電子商取引)をおこなうことです。

日本企業が海外の消費者に商品を販売したり、反対に海外企業が日本国内の消費者に商品を販売したりすることが越境ECに該当します。

越境ECは世界的に市場規模が大きく、急成長している市場です。海外の消費者をターゲットとした販路を獲得でき、売上増加が期待できるため、日本でも越境ECに取り組む企業が増えています。

国別のEC市場シェアランキング

国別のEC市場シェアランキング

世界規模で小売分野でのEC化が進み、ECの市場規模は中国とアメリカが全世界の約7割のシェアを占めます。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2022年の世界におけるBtoCのEC市場規模は5.44兆ドルで、EC化率は19.3%でした。そして、市場規模とEC化率は今後も上昇し、2024年には7.05兆ドル(EC化率22.2%)、2026年には7.62兆ドル(EC化率23.3%)になると予想されています。そのため、今後ますますECを前提とした商品販売が重要となってくるでしょう。

また、2022年における国別のBtoCのEC市場規模は、中国が全世界の50.4%、アメリカが18.4%、イギリスが4.5%、日本が3.1%、韓国が2.5%となっており、中国の市場規模が突出していることがわかります。

なお、世界の越境EC市場規模は2021年時点で7,850億ドルです。そして、2030年には7兆9,380億ドルにまで拡大すると予測されています。

参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」

日本・中国・アメリカ間の越境EC市場規模

日本・中国・アメリカ間の越境EC市場規模

日本・中国・アメリカの3国間における越境ECの市場規模をそれぞれ確認していきましょう。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、それぞれの国家間での越境ECの商品購入額は次のとおりです。

・日本が中国から商品を購入している額:392億円
・日本がアメリカから商品を購入している額:3,561億円
・中国が日本から商品を購入している額:2兆2,569億円
・中国がアメリカから商品を購入している額:2兆7,499億円
・アメリカが日本から商品を購入している額:1兆3,056億円
・アメリカが中国から商品を購入している額:9,055億円

参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」

比較してみると、日本から中国への購入は比較的少額ですが、中国から日本への購入は高額です。つまり、日本にとって、中国への越境ECは市場規模が大きくビジネスチャンスであるといえます。

中国の越境EC市場規模

中国の越境EC市場規模

中国はEC先進国で、EC市場規模は世界で一番大きいです。では、越境ECの動向はどのようになっているのでしょうか。ここでは、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」をもとに、中国の越境ECの市場動向について解説します。

中国の越境EC市場規模推移

中国では、越境ECの市場規模は右肩上がりの状況にあります。

2022年の越境ECの市場規模は、1,653億ドル(前年比1.6%)でした。2023年には1,714億ドル(前年比3.7%)、2024年には1,824億ドル(前年比6.4%)と好調に市場が拡大すると見込まれています。

中国や日本、欧米国は、政治上でさまざまな出来事もありますが、順調に越境ECの市場規模が拡大していることを考えると、今後も堅調な動きをする可能性は十分にあります。

中国の越境ECに利用される事業者シェア

中国では、上位3位の人気事業者が80%に近いシェア率を誇っています。国内外の幅広い店舗が出店しているため、越境ECでも上位事業者のECサイト利用率が高いと予測されます。

2022年のトップシェアはアリババグループで、シェア率は42.7%です。続いて京東(ジンドン)が19.1%、拼多多(ピンドウドウ)が15.5%という結果でした。

2017年はアリババが60%以上のシェア率を誇っていましたが、他事業者の台頭や、アリババに対しての独占禁止法違反で罰金が科された影響で、徐々にシェア率が分散しています。

中国の越境EC利用者の年齢層

中国で越境ECをよく利用している年齢層は、「25歳から34歳」と「35歳から44歳」です。どちらの年齢層も、全体の30%の利用率を占めています。

他の年齢層の利用率は「18歳から24歳」が15%、「45歳から54歳」が15%、「55歳から64歳」が10%、「65歳以上」が1%未満でした。また、65歳以上の年代が越境ECを利用する際、家族や友人に代行してもらい間接的に商品を購入していることが、EC事業者へのヒアリングなどで明らかとなっています。

なお、越境ECを利用する際に使われるデバイスは、複数回答でスマートフォン(96%)が最も多く、次点がノートパソコン(51%)です。

中国の越境EC利用者の決済方法

中国の越境ECでは、大手IT企業アリババグループ提供のキャッシュレス決済システム、Alipay(アリペイ)が決済によく使用されます。

複数回答で決済方法について尋ねたところ、Alipay(アリペイ)が47%、クレジットカードが43%、中国銀聯(UnionPay)が29%という結果になりました。

中国では日本と同じようにキャッシュレス決済が広く普及しているため、越境ECでもAlipayやWeChat Payがよく活用されています。そのため、これから越境ECに挑戦する場合は、クレジットカードだけではなくキャッシュレス決済の導入も検討しましょう。

中国の越境ECを活用して日本の商品が欲しいユーザーは多い

先述したとおり、中国の消費者は越境ECで2兆2,569億円もの商品を日本から購入しています。中国の消費者が、越境ECを活用して日本の商品を欲しい理由は次のとおりです。

・国内にないものを購入できる(52%)
・正規品等、信頼できる先から購入できる(44%)
・高品質である(41%)

参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」

自国では購入できないものを、越境ECで購入していることがわかります。このことから、越境ECを成功させるには、商品のオリジナリティやプレミアム感を出すことがカギになるといえるでしょう。

アメリカのEC市場規模

アメリカのEC市場規模

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」をもとに、アメリカのECの市場動向についても解説します。

アメリカのEC市場規模推移

アメリカでも、2020年から2022年にかけてEC市場は右肩上がりで規模が拡大しています。

2020年のEC市場規模は7,879億ドル(前年比32.3%)でしたが、2021年には8,707億ドル(前年比14.6%)に達し、2022年は1兆328億ドル(前年比7.4%)まで拡大しました。アメリカの小売市場において、EC市場は14.5%を占めます。

調査会社の予測によると、今後も、アメリカにおけるEC化率は安定して15%前後の水準を維持すると考えられています。

アメリカのEC事業者シェア

アメリカでは、Amazonのようなオンライン上のマーケットプレイスに出品するサードパーティ事業者が、EC事業者のうち最も高いシェア(23.3%)を獲得しているという結果になりました。

次に、Amazon(15.6%)、Walmart(6.5%)、Apple(3.9%)、eBay(3.5%)といった企業が上位のシェアを獲得しています。Amazon以外の企業は、いずれもシェア率が一桁台に留まっています。

AmazonやWalmart、eBayは、日本から越境ECをおこなう際によく利用されるECサイトですが、比較的シェア率は上位であるため、製品の特色などを考慮して使い分けるとよいでしょう。

アメリカの商材別EC市場規模

アメリカのEC市場でよく買われている商材は次のとおりです。

・1位:衣類・雑貨(1,808億ドル)
・2位:家具・建材・電子機器(1,121億ドル)
・3位:車・車用品(658億ドル)

特に「衣類・雑貨」と「家具・建材・電子機器」は、EC化率が高く13%を超えています。

また、商材によってはさらにEC化が進んでいるものもありました。例えば、アメリカにおける「書籍・音楽・ビデオ」のEC化率は7割近くあり、「コンピュータ・家電製品」は5割以上、「玩具・趣味」は4割以上であると推計されています。

越境ECのメリット

越境ECのメリット

越境ECには多くのメリットがあります。ここでは、代表的なメリットを2つ紹介します。

海外ユーザーを取り込める

越境ECの大きなメリットは、海外の消費者をターゲットとした販路を獲得できる点です。

越境ECは、地理的な制約を受けることがありません。商圏が絞られないため、国内の消費者だけではなく、海外の消費者にも商品を販売できます。

ターゲットとなる消費者の絶対数が増えれば、ビジネスを拡大でき、新規顧客の獲得により売上増加が期待できるでしょう。また、海外であれば国内よりも競合が少ない可能性もあります。

現在は、手軽に越境ECを開始できるサービスを提供する企業が増えたこともあり、越境ECを始めるハードルは低くなりつつあります。国際ビジネスでよく使用される英語に対応すれば、さまざまな国での商品販売が可能となるでしょう。

低コストでビジネス展開が可能

越境ECは、現地で実店舗を経営するよりも低コストでビジネスを展開できます。

実店舗を経営する場合と異なり、土地を準備して店舗を建築・賃借したり、備品を整備したり、現地で人を雇ったりする必要はありません。

越境ECに対応した自社ECサイトを構築するか、海外で展開されているECモールに出店すれば、初期費用とランニングコストを抑えて簡単に越境ECを始められます。

ただし、現地の商習慣や決済システムの導入など、事前に知っておきたい内容や準備することはあるため、下準備は丁寧におこなうことが大切です。

越境ECのデメリット

越境ECのデメリット

越境ECにはいくつかデメリットも存在します。メリットとデメリットをよく検討したうえで、越境ECに取り組むかどうかを判断しましょう。

言語対応が必要

越境ECをおこなうには、ECサイトのトップページはもちろん、カートページ、サポートページなどのすべてのページを、対象とする国の言語に翻訳できる機能が必要です。

インターネットブラウザには、翻訳機能により日本語を翻訳できるものもありますが、ユーザーにとって使いやすいサイトを設計し、商品情報を正確に伝えるためには、自社で翻訳を済ませておくことが大切です。

また、海外の消費者からの問い合わせや商品のキャンセル、返品に対応するためには、言語に精通したスタッフを雇う必要もあります。

許可や申請など輸入・輸出の知識が必要

越境ECをおこなう際は、一般的な会社法や国内法、国際法を遵守するほか、海外のECに関する法的な知識も身につける必要があります。

【越境ECに関して学んでおくとよい知識】
・ビジネスライセンスと許可について
・税金について
・電子商取引システムについて
・商標・特許・著作権について
・年齢制限について
・プライバシー法について

海外に商品を販売するには、国ごとの許可や申請が必要です。国や地域によっては、酒類や医薬品など、商品そのものの輸出が制限されているケースもあります。さらに、関税率も国や商品により大きな差があります。

日本国内と同じように販売していると、法律違反として取り締まられる可能性もあるため、注意が必要です。

トラブルのリスクがある

越境での商品販売は、国内取引よりトラブルが起こりやすい点にも注意が必要です。

国民性の違いによってコミュニケーショントラブルが発生しやすいほか、配送中の商品紛失や破損が起こるおそれもあります。また、セキュリティ対策が不十分な決済システムを利用してしまうと、情報漏洩により損害賠償を請求されるリスクもあります。

さらに、偽造クレジットカードでの購入や不正購入により、代金回収が困難となるトラブルにも注意しなければなりません。

越境ECの市場規模データをもとに進出先を検討しよう

越境ECの市場規模データをもとに進出先を検討しよう

越境ECにより海外へ販路を広げることは、新規顧客の獲得や売上の増加に有効です。海外に実店舗を持つよりも、低コストかつ容易に海外の消費者を開拓できます。

スマートフォンが普及し、決済方法も充実したことで、どの国の消費者でも手軽にオンラインショッピングを楽しめるようになりました。今後、越境ECの市場規模はさらに拡大していく見込みです。日本の商品の需要は世界的に高いため、越境ECに参入すれば販路の大幅な拡大が期待できます。

少子高齢化により日本市場が縮小するなか、海外市場へ目を向け、越境ECを検討してみる価値はありそうです。