越境ECで成功している日本企業8選!成功する企業の特徴やポイントも解説
越境ECを活用して国際市場に挑戦している日本企業の中には、見事に成功を収めている事例が数多く存在します。
越境ECを成功させるためには、単に商品を海外に売り込むだけではなく、地域ごとの消費者ニーズを深く理解し、文化や言語の障壁を越えて消費者の心を掴むことが重要です。
そこで本記事では、越境ECで成功を収めた日本企業を8社紹介するとともに、越境ECの強みと可能性、また成功させるためのポイントについて解説します。
越境ECの市場規模
経済産業省の2022年度「電子商取引に関する市場調査」によると、2021年の世界の越境EC市場規模は7,850億USドルと推計されています。また、2030年には7兆9,380億USドルまで拡大すると予想されており、越境ECの市場規模は今後も拡大を続けていくとみられています。
2022年の国別のBtoC EC市場規模ランキング1位は中国で、全世界の50.4%を占めました。2位はアメリカ(18.4%)、3位がイギリス(4.5%)、4位が日本(3.1%)と続いています。中国の市場規模の大きさが圧倒的であり、アメリカをあわせて上位2カ国で世界の68.8%のシェアとなっています。
参考:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」
急速な市場規模拡大が予想される理由は、消費者の越境ECに対する認知度の向上、自国では手に入り難い商品への興味、価格の利点、商品やメーカーへの信頼などです。また、事業者の国際市場への意欲、および物流レベルの改善も、市場規模拡大を後押ししています。
越境ECに関する日本企業が持つ強み
越境EC市場において日本企業が持つ強みとしては、高品質な製品やサービス、革新的な技術力、国際的に認知される日本ブランドの信頼性、そして日本文化が挙げられます。これらの要素は相互に補完しあい、グローバルな競争において日本企業に独自のアドバンテージを提供しています。
特に、日本製品の細部にわたるこだわりと品質の追求は、世界中の消費者から高く評価されているポイントです。一部の日本企業は、独自の製品とサービスを通じて世界各地の顧客との信頼関係を築き上げ、国境を越えたビジネス展開において新たな可能性を切り開いています。
さらに、環境への配慮を重視した製品やサービスを提供することで、環境意識が高まる現代の消費者ニーズに応えている企業もあります。
これらの強みを最大限に活かすことが、越境ECにおいて海外市場への進出を成功させる鍵といえるでしょう。
越境ECで成功する日本企業の特徴
越境EC市場で際立つ成果を上げている日本企業には、共通の特徴があります。ここからは、その特徴をもとに、海外市場で勝利を収めるための3つの重要な戦略について紹介します。
事前リサーチをしっかりおこなっている
越境ECで飛躍的な成功を収めている日本企業は、自社製品を海外市場に投入する前に、ターゲットとする国や地域の消費者行動、文化的背景、市場の傾向を深く掘り下げて理解しています。
国や地域によって文化や消費者の好みが異なるため、この段階での綿密なリサーチは、商品選定と戦略立案において極めて重要です。
また、成功している企業はリサーチを単なる一過性の活動とは捉えていません。継続的な市場分析を通じて、常に最新の消費者トレンドや市場の変化を捉え、それに応じた製品開発やマーケティング戦略の調整をおこなっています。
市場に対する深い理解と柔軟な対応能力は、越境EC成功のための重要な要素です。
商品の説明文がしっかり記載されていてわかりやすい
顧客が商品を直接手に取ることができないオンラインの世界では、商品の魅力を伝えるために詳細な写真とわかりやすい説明文が不可欠です。
越境EC市場で成功している企業は、商品の特徴、使用方法、素材感などを顧客が容易にイメージできるよう細かく、かつ具体的に説明しています。
多角的な写真を用いて商品の細部まで示し、説明文と組み合わせることで顧客の疑問を解消することが可能です。丁寧な情報提供は、顧客の購入決定を後押しして、越境ECにおける売上増加に大きく寄与します。
積極的に情報発信をおこなっている
売上の増加を目指すうえでは、自ら積極的に情報を発信し続ける姿勢が欠かせません。SNSのようなデジタルプラットフォームは、顧客と直接的に関わる貴重なツールとなり得ます。効果的なSNSなどの活用により、より多くの潜在顧客との接点を確立し、それらを絶えず拡大していくことが求められます。
ここで大切なのは、ただ情報を発信するだけではなく、顧客との関係構築に焦点を当て、興味やニーズに合った内容を提供することです。戦略的に情報を発信し、新規顧客の獲得と既存顧客の維持を図ることで、売上増加につながります。
さらに、顧客のフィードバックを積極的に受け入れ、それをビジネス戦略に反映させることも重要です。
越境ECでの日本企業の成功事例8選
越境ECで実際に成功を収めている日本企業の事例を、8つ紹介します。さまざまな分野の事例から、越境ECを成功させるためのポイントを学びましょう。
ユニクロ
日本を代表するアパレルブランド「ユニクロ」は、ヨーロッパや北米、アジア諸国に至るまで、世界各国で事業を展開しています。
2020年のコロナ禍では越境EC事業は大幅な売上減となりましたが、「エアリズムマスク」などの新商品を投入したことで、中国市場を中心に売上が回復しました。
アフターコロナ時代においても、ユニクロの製品が持つ信頼性や品質の高さが海外で高く評価され続け、売上の安定に大きく寄与しています。困難な状況下での柔軟な対応と商品力が売上回復につながった事例です。
参考:优衣库网络旗舰店
ダイアナ
「ダイアナ」は、70年の歴史を持つ婦人靴のオリジナルブランド販売企業です。首都圏を中心に全国86店舗を展開し、2023年2月の決算で年間売上高約148億円を記録しています。2011年から越境ECを開始し、メイドインジャパンの高品質製品で他社との差異化を図りながら、適正価格での販売をおこなっています。
国内向けECも展開しており、ダイアナのブランドイメージをビジュアルで表現したデザインが特徴です。一方、ブランド認知度の低い海外向けサイトでは、豊富な商品ラインナップと親近感のあるデザインで認知度向上に努めています。
また、多言語対応を強化し、簡体字に加え繁体字のページも設けて、幅広い顧客に利用しやすい環境を提供している点も特徴です。
北海道お土産探検隊
株式会社山ト小笠原商店が運営する「北海道お土産探検隊」は、六花亭やロイズなどの人気のお土産を越境ECで販売し、顕著な成果を上げています。
同サイトは外国語担当者がいない中「翻訳機能」を駆使して海外ユーザーとのコミュニケーションを維持し、言語や物流の壁を乗り越えて売上を伸ばしました。
さらに、ITに詳しくない状態から楽天市場への出店を実現し、中国・英語・日本語を話せるスタッフを採用するなど、受注管理やページ制作においても積極的に取り組んだことで、さらなる売上増加につながっています。
参考:北海道お土産探検隊
GLOKEN
「GLOKEN」は、伝統的な日本の遊び「けん玉」を海外に紹介する越境ECサイトを運営しています。日本国内では数年前にけん玉ブームがありましたが、海外では今も一部の熱心なファンに支えられてブームが持続しています。
GLOKENの注目すべき点は、ただ商品を販売するだけではなく、けん玉文化の普及にも力を入れていることです。「KWC(けん玉ワールドカップ)」というオンラインイベントを開催し、世界中から愛好者を集めています。
この取り組みにより、国境を超えてけん玉の楽しさを共有し、国際的なコミュニティを形成しています。
参考:GLOKEN
SAMURAI STORE
「SAMURAI STORE」は、元eBay社員の桐田敏彦氏が2001年に立ち上げたECサイトで、世界中から高い人気を集める「本物の鎧兜」を専門に販売しています。
越境ビジネスがまだ始まったばかりの時代に、未開拓の市場であった甲冑の販売に着目し、その独自性とニッチな市場戦略で成功を収めました。
同サイトは、特定の商品にフォーカスすることで、世界中に独自の販売ルートを確立し、多くのリピーターを獲得しています。他にはない商品をいち早く取り入れた戦略が成功につながった好例といえます。
メーカーズシャツ鎌倉
「メーカーズシャツ鎌倉」は、手頃な価格でメイドインジャパンの上質なシャツを提供し、越境ECで海外市場進出に成功しています。
2012年にニューヨークで実店舗を開設して以来、その品質は徐々に認知されていきました。そして、GQアメリカ版など海外メディアにも取り上げられ、リピート注文が増加したことを機に、オンライン販売を開始しました。
越境ECでは、国内外の在庫管理を一元化し、ドル建てやPayPalでの決済に対応するなど、海外顧客の利便性を高めるためのさまざまな対策を打っています。これらの施策は顧客満足度の向上に寄与し、オンライン注文や国内店舗への来店につながっています。
Kakimori
東京都台東区に構える文具店「Kakimori」は、オーダーメイドのノートや筆記具を提供する越境ECサイトを展開しています。海外の顧客から熱い支持を受けており、特に自分だけのオリジナル色でインクを作れるサービスが人気です。
KakimoriのECサイトは、独特なブランドの世界観を前面に打ち出したもので、訪れる人々を魅了しているのが特徴です。商品一つひとつが語るストーリーやこだわりが、サイトを訪れた人をただの閲覧者から購入者へと導く強力な後押しとなっています。
ただ商品を販売するだけではなく、ブランドが持つ物語と体験を共有することの重要性がわかる事例といえるでしょう。
参考:Kakimori
オタクモード・ドットコム
「オタクモード・ドットコム」は、海外のファンに日本のアニメやゲームのグッズを提供する越境ECサイトとして、アメリカやカナダ、フランスを含む多数の国々で人気を集めています。
日本のオタク文化に魅了された海外ユーザーが容易に商品を購入できる環境を整備し、特定のニーズを満たすことに成功した事例です。
SNSを通じた集客戦略が功を奏し、Facebookでは日本のポップカルチャーに関する情報を発信して2,000万の「いいね!」を獲得した実績もあります。海外ユーザーをECサイトへ誘導することで、売上の増加につなげています。
日本企業が越境ECで成功するためのポイント
越境ECを成功させるには、ただ商品を海外に送るだけでは不十分です。文化や言語の壁を乗り越えることが成功への鍵となります。
ここからは、海外市場での認知度向上と信頼獲得のために重要な3つのステップを紹介します。
越境ECサイトを多言語に翻訳する
越境EC事業においては、海外の顧客をターゲットとするため、商品やサービスの情報を多言語で提供することが必須です。
英語対応は基本ですが、ターゲットとする市場によっては、追加の言語での提供が必要となるでしょう。どの言語でサービスを展開するかは、詳細な市場調査に基づいて決定しなければなりません。
対象言語が決まれば、自社のWebサイトやページの内容を適切に翻訳し、海外の顧客に向けて情報を正確に伝える必要があります。正確な翻訳は、海外市場でのブランド認知と信頼構築に不可欠です。
外国でのニーズをリサーチする
越境ECを利用して海外の顧客に商品を提供する際は、海外でのその商品の需要を事前に把握することが重要です。どの地域の消費者が商品に興味を示すかを特定するためには、徹底した市場調査が重要となります。
アンケート調査、現地の店舗での調査、オンラインでのデータ分析など、さまざまな方法を駆使してターゲット市場を明確にしましょう。
リサーチが完了したら、あわせて効果的なプロモーション方法も調査しておきましょう。翻訳やライティングなど、必要となる技術がある場合は、事前に人材を確保しておくことも大切です。
安心して購入できる決済方法を用意する
越境ECで実際の販売段階に移行すると、次に直面する重要な課題は決済方法の選択です。決済方法は、単一の方法だけではなく、ターゲット市場の特性に応じた多様な選択肢を提供する必要があります。
例えば、一部の先進国ではクレジットカード決済が主流です。この方法のみで十分な場合もありますが、世界を広く見渡すと、銀行振込や現地特有の決済方法への対応が不可欠になることも少なくありません。
特に、各地域に根付いたローカルな決済習慣や、現金支払いの好みなど、地域ごとの文化や経済状況を踏まえた柔軟な決済システムの整備は、越境EC事業を成功に導くうえで避けて通れない道です。
これらの対策を講じることで、より幅広い顧客層にアプローチし、国際市場での販売機会を最大限に活用できます。
越境ECは新規参入企業にもチャンスがある
越境ECは、新規参入企業にとって未知の可能性を広げる舞台です。成功企業の事例から学びながら、自社製品の品質、独自性、そして文化的魅力を前面に出し、丁寧な市場リサーチとターゲットにあわせたサービス提供をおこなうことで、成功の可能性が高まります。
また、多言語対応や現地ニーズへの柔軟な対応、安心できる決済方法の提供など、越境ECには綿密な戦略が求められます。
これらのポイントを押さえることで、新規参入企業でも世界市場での勝機を見出し、越境ECの成功に近づけるでしょう。