中国版のTikTokとは?日本版との違いを解説
ショート動画が共有できることで若年層を中心に支持を集めているTikTokは、中国のByteDance(バイトダンス)社が開発したアプリです。
実は、日本版のTikTokと中国版のTikTokアプリには、さまざまな違いがあります。
本記事では、中国版TikTokと日本版TikTokの違いや、中国版TikTokが抱える課題、中国版TikTokの具体的な活用方法について解説します。
中国版TikTokがどのようなアプリか気になる方は、ぜひ参考にしてください。
中国版のTikTok「抖音(ドウイン)」とは
中国版のTikTok「抖音(ドウイン)」は、バイトダンス社(ByteDance社)が2016年9月に中国でリリースしたショートビデオ共有アプリケーションです。
ユーザーは、エフェクトやフィルターを利用して、魅力あふれる15秒から60秒の動画を制作できます。音楽、ダンス、コメディ、美容などさまざまなジャンルのコンテンツであふれており、若年層を中心に利用されているSNSです。
さらに、自身で制作した動画を他のユーザーと共有し、いいねやコメントを送って楽しむこともできます。
近年では、多くの中国企業が製品の宣伝や販売に利用しており、マーケティング施策としても広く活用されています。
中国版TikTokと日本版TikTokの違い
TikTokの中国版と日本版の大きな違いは、機能と地域です。
ここでは、中国版のTikTokと日本版のTikTokの違いについて解説します。
中国版の方で先に最新機能が実装される
中国版TikTok、抖音(ドウイン)は、日本版(グローバル版)TikTokの派生元です。そのため、最新機能は先に抖音(ドウイン)から実装され、その後問題がなければ日本版(グローバル版)TikTokに実装されます。
例えば、日本版TikTokにライブ配信機能が実装されたのは2020年7月でしたが、抖音(ドウイン)では2020年以前から実装されていました。
また、グループチャット機能も当初は抖音(ドウイン)のみに実装されていましたが、2023年に遅れて日本版にも実装されています。
このように、最新技術や機能の実装は抖音(ドウイン)が先行する傾向にあります。
展開されている地域が違う
日本版TikTokはグローバル版のためユーザーが世界中にいる一方、抖音(ドウイン)のユーザーは、中国国内に限定されているという違いもあります。
マーケティングの視点で見ると、抖音(ドウイン)は中国市場でのプロモーションに特化したツールであり、日本版(グローバル版)TikTokは世界的なアピールを目的として活用できるプラットフォームであるといえるでしょう。
その違いはコンプライアンスにも反映されており、抖音(ドウイン)は中国国内の法律に適合する仕様としている一方、世界の国々の法律において問題がない仕様としているのが日本版(グローバル版)TikTokです。
中国版のTikTokがもつ課題
中国版のTikTok、抖音(ドウイン)は、中国国内に限定されたSNSです。そのため、そもそも他の国で利用できない場合や、中国政府の介入といった課題があります。
ここでは、抖音(ドウイン)が抱える3つの課題を解説します。
日本のApple IDではインストールできない
抖音(ドウイン)の利用は中国国内に限定されているため、日本のApple IDを使用してインストールできません。
中国では一部のアプリに地域規制がかけられており、抖音(ドウイン)もその対象であるため、インストールには中国のApple IDが必要だからです。
そのため、日本の企業がマーケティングに抖音(ドウイン)を活用したい場合は、中国のApp Storeにアクセスできるようにアカウント設定を変更し、抖音(ドウイン)をインストールしたあとは、日本のアカウントに戻すなどの手間がかかります。
抖音(ドウイン)のアプリをインストールさえしてしまえば、日本のApple IDに戻しても問題なくアプリを使用できますが、少なからず手間がかかることに注意しましょう。
また、Androidでダウンロードする場合は、中国版のGoogle Playがないため、中国の検索エンジンである「Baidu」を経由してダウンロードする必要があります。
規制が厳しい
抖音(ドウイン)は、中国政府による厳しいコンテンツ規制の影響を受けており、特定の政治や宗教、文化に関する表現を含むコンテンツが禁止されています。
さらに、中国政府によってコンテンツの検閲が日常的におこなわれていることから、自由な表現にも規制がかかります。
そのため、中国市場のマーケティングに抖音(ドウイン)を活用したい場合は、中国の法律や規制を熟知しておくことが大切です。
また、抖音(ドウイン)では広告表示に関しても細かな設定ができないなどの制限もあります。
広告手法が多様化している日本版(グローバル版)のTikTokと同様の手法を抖音(ドウイン)で用いるのは、難しいケースがあることも認識しておきましょう。
利用ユーザーは中国人が大多数を占める
抖音(ドウイン)は、中国市場向けに開発されたアプリであるため、中国の文化やトレンドに合わせてカスタマイズされています。
そのため、世界的に需要があっても中国人に馴染まないコンテンツは埋もれてしまう可能性もあるでしょう。
抖音(ドウイン)は、中国市場のユーザーをターゲットにする場合はよいですが、日本やグローバル市場のユーザーをターゲットにする場合には不向きだといえます。
中国版TikTokをダウンロードする方法
中国版TikTokの抖音(ドウイン)は、日本版と同じような流れでダウンロードできません。
ここでは、iOSとAndroidそれぞれで抖音(ドウイン)をダウンロードする方法についてご紹介します。
iOSでダウンロードする方法
中国版TikTokの抖音(ドウイン)をiOSでダウンロードする手順は次のとおりです。
1.Apple IDの設定画面から「サインアウト」を選択
2.Apple ID作成画面で新しいApple IDを作成
3.マイアカウントの「国または地域名」を「中国本土」に変更。住所は適当に入力
4.App Storeで「抖音」を検索、ダウンロード、インストール
5.電話番号を登録する。日本の電話番号は「86」を選択
6.日本のApple IDでサインインする
抖音(ドウイン)をダウンロードしたあとは、Apple IDを普段使用しているものに戻す作業を忘れないようにしてください。
Androidでダウンロードする方法
中国版TikTokの抖音(ドウイン)をAndroidでダウンロードする方法は、次のとおりです。
中国にはGoogle Playストアのサービスがないため、中国最大手の検索エンジン「Baidu」を経由してダウンロードします。
1.「Baidu」を開いて抖音を検索
2.抖音のページで「安全下載」ボタンを押す
3.「Google Playストア」以外からアプリをダウンロードするため警告メッセージが表示されるが、インストールを続行する場合は「OK」をタップすると、「Baiduアシスタント(百度手机助手)」がダウンロードされる
4.「Baiduアシスタント」をインストールすると、抖音がダウンロード、インストールされる
5.インストール完了後に設定と許可をタップする
Google Playストア以外からのダウンロードに不安を感じる方は、インストールを控えておきましょう。
中国版TikTokの具体的な活用方法
規制や制限の多い中国版TikTokですが、中国市場をターゲットにする場合にはいくつか効果的な活用方法があります。
ここでは、中国版TikTokの具体的な活用方法について解説します。
広告を出稿する
中国版TikTokに広告を出稿することで、ターゲット層にアピールできます。費用は発生しますが、動画広告は視聴者にインパクトを残しやすいため、コンテンツが魅力的であるほど拡散されやすくなるでしょう。
中国版TikTokの広告には、アプリを起動した時に表示される起動動画広告、タイムライン上に表示されるインフィード広告、ハッシュタグチャレンジ広告の3種類があります。
とくに、ハッシュタグチャレンジ広告はユーザー自身に動画を作ってもらい、商品やサービスを宣伝してもらえることから、記憶に残りやすいだけでなく、購買につながりやすいという特徴があります。
動画プロモーションをおこなう
商品やサービスの認知度向上に効果的なのが動画プロモーションです。
動画プロモーションはブランディングに活用しやすいため、Adidas neoやBMW、Diorなどの海外メーカーも抖音(ドウイン)を活用しています。
ショートムービーアプリであるTikTokの主な機能を中心に活用した手法であるため、馴染みやすく、利用しやすい方法といえるでしょう。
KOLプロモーションをおこなう
KOLプロモーションとは、中国市場において影響力と専門性のあるインフルエンサー(KOL)を起用してプロモーションをおこなうことです。
政府による情報統制のある中国では、SNS上で活動する情報発信者の意見には大きな影響力があります。ユーザーに対する購買訴求への影響力も大きいため、中国版TikTokにおいてKOLプロモーションは効果的な手法といえるでしょう。
中国版TikTokを利用する場合の注意点
中国版TikTokである抖音(ドウイン)の利用時には、いくつか知っておきたい注意点があります。
ここでは、中国版TikTokを利用する際の注意点を解説します。
中国での法律違反などのリスク対策が必要
中国でも日本と同様に、権利保護の法律が存在します。例えば、著作権や特許、商標に関する法律です。これらの法律について事前に理解しておかなければ、中国で法律に抵触するリスクがあります。
また、中国共産党に批判的な言葉など、禁止されている用語などもあるため、知らずに使用しないように注意が必要です。
中国の法律や禁止用語などに詳しい人材にコンプライアンスチェックを依頼するなど、事前にしっかりと対策を検討しましょう。
権利侵害によるリスク対策も検討する
抖音(ドウイン)を利用することにより、中国で自社の商品やサービスに対しての権利侵害を受けるリスクもあります。
日本と同様に中国にも商標権登録がありますが、中国では先に申請した人に権利が発生するため、悪質な業者に先に商標権登録をされてしまうことがあります。
先に登録されてしまうと解決が難しくなってしまうため、必要な場合は早い段階で商標権登録を済ませておくことがおすすめです。
中国版と日本版のTikTokの違いを知っておこう
中国版TikTokの抖音(ドウイン)は、中国市場に限定されたSNSです。元々中国企業が開発したSNSであるため、日本版(グローバル版)TikTokには実装されていない最新機能を有しています。
中国国内で使用することを前提としているため、ダウンロードには設定変更が必要であったり、コンテンツには中国政府による厳しい規制があったりするものの、中国市場にアプローチできる有効な手段の一つです。
中国版と日本版のTikTokの違いを十分把握したうえで、マーケティングに活用しましょう。