インサイトマーケティングとは?特徴や成功のポイント、事例を紹介

2023年12月27日

インサイトとは、消費者自身も気づいていない購買行動をする根拠や動機のことです。それを活用したマーケティング戦略をインサイトマーケティングといいます。

本記事では、インサイトマーケティングの概要やメリット・デメリット、インサイトの見つけ方などを紹介します。

インサイトマーケティングとは?

インサイトマーケティングとは?

インサイトマーケティングとは、消費者の購買動機や購買行動に至る理由を分析し、新たな需要と市場をつくりだすことを目指す戦略です。

インサイトとは、「消費者自身も気づいていない購買行動の根拠や動機」のことを指します。インサイトは漠然としたものですが、消費者の「潜在ニーズ」を引き出し、それを購買意欲へと変化させていく「スイッチ」のようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。

インサイトを的確に捉えた商品やサービスは消費者の心をつかみ、大きな売上を上げる可能性を秘めています。

インサイトが注目される理由

インサイトが注目されているのは、企業や個人のニーズの多様化がひとつの要因となっています。多様化したニーズに応えるためには、インサイトを分析し、新たな需要を生み出す必要があるのです。

物があふれた現代において、「品質がよい」「機能性が優れている」というだけでは消費者の購買意欲につながらず、さらなる工夫が必要となります。

そこでインサイトを深掘りし、消費者がまだ気づいていない欲求に応えて新たな需要を生み出すことで、競合他社との差別化にもつながっていくでしょう。

インサイトとニーズの違い

インサイトとニーズは、似ているようで異なるものです。

インサイトはしばしば「潜在ニーズ」と同じようなニュアンスで使われることもありますが、潜在ニーズよりもさらに深い所にある購買行動の「動機」を指します。消費者自身ですら把握できていない無意識の領域にあり、ニーズよりも漠然としたものです。消費者の潜在ニーズを刺激し、購買へと駆り立てるトリガー的なものともいえるでしょう。

商品を利用してはじめて気づく感情や、普段は見過ごしているものなど、インサイトは生活のさまざまなところに存在しています。

インサイトは潜在ニーズよりも発見しにくいこともあり、競合との差別化に有効です。

インサイトマーケティングでインサイトを見つける方法

インサイトマーケティングでインサイトを見つける方法

消費者のインサイトを発見できれば、他社との差別化を図ることができ、市場で優位に立つことが期待できます。では、インサイトはどのように見つければよいのでしょうか。

ここでは、インサイトを見つける方法を紹介します。

ソーシャルメディアでのデータ収集

ソーシャルメディアでは、消費者の生の声をタイムリーに確認できます。それらの声を収集し、分析すれば、消費者の潜在ニーズがわかり、インサイトの発見につなげられるでしょう。

例えば、ハッシュタグやトレンドなどから、特定の商品やサービスをキーワードとして検索すれば、ユーザーや見込み客の率直な感想を見つけられます。

そこからさらに、特定のキーワードを使用した投稿をしているユーザーの属性や特徴(年齢や性別、価値観など)、キーワードが注目されている理由などを深堀りして分析することにより、消費者のインサイトに辿り着ける可能性があります。

インタビュー調査

インタビュー調査もインサイトを見つけるのに有効な方法です。日常生活における行動や商品・サービスへの評価などを聞き取れれば、インサイトを探ることが可能です。

ただし、情報が複雑になると分析しづらくなるため、インタビューする内容は事前に決めておくこと、また内容はできるだけ簡潔にすることを意識しましょう。

ただし、インタビューだけではインサイトの発見は難しいため、他の調査方法と併用してインサイトの発見につなげることがポイントです。

フレームワークで探る

フレームワークとは、マーケティングにおいて課題や情報の抽出、分析を行うためによく用いられる枠組みです。適切なフレームワークを活用すれば、インサイトを効率よく見つけ出せます。

インサイトの発見には、下記3つのフレームワークが有効です。

共感マップ

消費者の感情・思考・行動・ニーズを6つの観点から視覚化するフレームワーク

バリュープロポジションキャンバス

消費者のニーズと解決策を視覚的にマッピングするフレームワーク

カスタマージャーニーマップ

消費者が商品・サービスを認知してからどのように購買に至るかを時系列で描写するフレームワーク

 

中でも、ターゲットの内面がわかる「共感マップ」はインサイトを探るうえでとくに有効です。共感マップを丁寧に作成することでインサイトの視覚化ができるため、積極的に活用しましょう。

インサイトマーケティングを進めるメリットとは?

インサイトマーケティングを進めるメリットとは?

インサイトをマーケティングに活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的な3つのメリットを紹介します。

商品やサービス、ビジネスモデルにイノベーションをもたらす

インサイトを分析し、消費者の購買行動の根拠や動機を明らかにすれば、既存の市場にはない商品・サービスを生み出せるきっかけになります。その結果、企業の競争力向上や、市場でのシェア拡大などにつながるでしょう。

商品開発だけでなく、販売やプロモーション方法にインサイト分析の結果を反映すれば、ビジネスモデルにまで影響をもたらす効果も期待できます。

消費者との結び付きを強められる

インサイトを追求した商品・サービスは、企業と顧客の結び付きも強めます。

消費者のインサイトを反映した商品・サービスは顧客満足度を高め、消費者が「自分たちのことを理解してくれる会社」として企業を捉えるでしょう。この企業の商品・サービスなら間違いないという認識が生まれ、消費者との信頼関係を育むことが期待できます。

新規顧客層もターゲットにできる

インサイトマーケティングでは、顧客の言葉や行動から、本当に求めているものを見つけ出します。そのため、顧客自身も気づいていないニーズや問題を解決できる商品・サービスを開発することが可能です。これにより、従来の市場では見過ごされていた、あるいは存在しなかった需要を見つけることができるでしょう。

インサイトマーケティングは、顧客の心を掴むだけでなく、新たな市場を切り開くことができるマーケティング戦略なのです。

インサイトマーケティングを進めるデメリットとは?

インサイトマーケティングを進めるデメリットとは?

インサイトをマーケティングに活用することには、いくつかの注意点もあります。ここでは、インサイトマーケティングのデメリットを紹介します。

人間の行動に対する分析が十分ではない

インサイトマーケティングは、「人間の行動は合理的である」という前提のもとに進めるものです。しかし、消費者の行動には非合理的なことも多く、前提が成り立たないこともあるともいわれています。

例えば、同じ商品でも、価格やパッケージ、ブランドなどによって購買意欲が変わることがあるのです。

そのため、実践的な方法はまだ確立されておらず、インサイトマーケティング以外の戦略も併用する必要があるでしょう。

インサイトだけに注目すると的外れになることがある

インサイトは、あくまでも消費者の心理の一側面です。そのため、インサイトだけに注目していると、他の視点が欠落し、的外れな施策となってしまう場合もあります。

インサイトマーケティングを効果的に進めるには、分析の結果を複数の視点から検証し、その妥当性を判断したり、インサイト以外の分析も併用しながら、商品やサービスの開発をすることが大切です。

また、インサイト分析による仮説は、現場での実践・検証を繰り返して精度を高めていきましょう。インサイトに関するノウハウを蓄積し、将来的に活用できるようにすることも重要です。

インサイトマーケティングの実例

インサイトマーケティングの実例

インサイトマーケティングは、実際どのように行われているのでしょうか。ここでは、その実例を3つ紹介します。

株式会社BANDAI SPIRITSの「一番くじ」のマーケティング

ハズレなしのキャラクターくじである「一番くじ」は、BANDAI SPIRITSの人気商品のひとつです。
しかし、一番くじも販売数に伸び悩んでいる時期がありました。そのときに活用したのが、さまざまな角度から集められたインサイトデータの分析です。

自社製品に好意的な消費者の声だけでなく、幅広い層から率直な意見を聞き、さらには商品への欲求度や購買層の特性、購買時期といったさまざまな角度からの消費者インサイトを分析しました。

その結果、購入回数が1〜2回程度のライト層やファンになりたてのマス層など、新たな消費者層の開拓に成功しています。

ライオンの液体洗剤「トップ ナノックス」のマーケティング

ライオンでは、消費者の洗濯物がきれいになったかどうかを確認するためにニオイを嗅ぐという行動に注目しました。そして、潜在ニーズとして「洗濯後に嫌なニオイがしない」ことにインサイトがあると分析し、汚れだけでなくニオイまで落とす衣類用洗剤「トップ ナノックス」を開発しました。

「ニオイまで落とす」をキャッチコピーに宣伝・販売した結果、同商品は発売から6カ月で1,400万個を販売し、同社の売上高を前年比1.6倍に押し上げました。

洗浄力だけでなく、インサイトを捉えた「ニオイまで落とす」という機能性が競争優位性につながった事例です。

日清食品株式会社「カップヌードルリッチ」のマーケティング

日清食品のカップヌードルは、60歳以上の消費者の購入が低迷していました。そこで、インサイト分析を行い、シニア層は健康志向よりも美食志向の方が強いのではないかと予測。健康には配慮しつつも、スッポンやフカヒレなどの高級食材を使った、贅沢な味わいが特徴の「カップヌードルリッチ」を開発しました。

カップヌードルリッチは、通常のカップヌードルよりも高価格でありながら7カ月で1,400万食を販売し、リピート意向は50%から70%に達するヒット商品となったのです。

インサイトマーケティングは他の観点と併用することが重要

インサイトマーケティングは他の観点と併用することが重要

インサイトマーケティングは、新たな需要と市場をつくりだし、競合他社との差別化を図る手法です。うまく活かして商品開発やプロモーション活動ができれば、企業のさらなる利益拡大も期待できます。

ただし、インサイトマーケティングはまだ確立された実践手法がなく、試行錯誤を繰り返しながら社内でノウハウを蓄積していく必要があります。確実に結果を出すためにも、コンサルティングサービスを利用しながら、進めていくのがよいでしょう。

また、消費者の生の反応を知り、インサイト分析をしたいなら、ライブコマースも有効な手段です。ユーザーと直接コミュニケーションを取れるので、リアルなニーズや悩みを知ることができます。

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