ブランドマーケティングとは?特徴や事例を紹介
新しい商品やサービスを市場に投入する際に欠かせないブランドマーケティング。競合他社より優位に立つためのマーケティング戦略として、多くの企業が実施しています。
しかし、ブランドマーケティングをこれから導入しようとしている方の中には、具体的にどのように実施していけばよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ブランドマーケティングの具体的な実施方法や、効果などについて紹介します。成功事例も紹介するので、各ブランドの戦略も参考にしてみてください。
ブランドマーケティングとは?
ブランドマーケティングとは、企業や商品の「ブランド価値」を高め、消費者にその独自性や魅力を効果的に伝えるためのマーケティング戦略です。この取り組みは、単に商品を売ることを目的とするのではなく、ブランドが持つストーリーや理念を共有し、消費者にポジティブなイメージや信頼感を与えることを目指します。
消費者との感情的な結びつきを築くことで、長期的に顧客のロイヤリティを保ち、競合との差別化を図れるでしょう。そのアプローチ法は多岐にわたり、商品の品質や顧客サービス、店舗やWebサイトなどさまざまあります。
最終的に自社商品やサービスが、高品質であるとユーザーに認識してもらえるブランドとなることを目指すマーケティング手法です。
ブランドマーケティングと一般的なマーケティングの違い
ブランドマーケティングはマーケティングの一部にあたりますが、一般的なマーケティングとは異なります。
ブランドマーケティングは、特定の商品やサービスのブランドイメージを長期にわたって構築し、強固な顧客基盤を作り上げる取り組みです。ポジティブな感情が湧き起こるような顧客体験やブランドストーリーを通じて、消費者との関係を深めることを目的とします。
これにより、消費者にブランドへのロイヤリティが生まれ、いわゆる「指名買い」をしてもらえるようになる可能性もあるでしょう。価格競争に巻き込まれることなく、自社の価格を貫くこともできるようになります。
一方、一般的なマーケティングは、商品の売上増加や市場シェアの拡大を目的として戦略を立案、実施します。基本的には市場調査によって顧客のニーズや要望を把握したうえで、商品開発や価格設定、流通戦略、プロモーションなどをおこなうのが一般的です。
ブランドマーケティングが価値の提供を目指すのに対し、一般的なマーケティングは商品やサービスの提供を目指すものともいえるでしょう。
ブランドマーケティングで得られる効果とは?
多くの企業が実施しているブランドマーケティングですが、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。ここでは、ブランドマーケティングによって得られる4つの効果を紹介します。
価格競争からの脱却が可能
他社との価格競争に悩まれている場合は、ブランドマーケティングを推進することで解決につながる可能性があります。
ブランドマーケティングは、商品やサービスそのものの機能を超えて、消費者に特定の価値や体験を提供することで差別化を図るものです。ユーザーに寄り添ったブランディングは、顧客のロイヤリティを高めるため、次第に消費者は「そのブランドのものである」という理由で購入してくれるようになるでしょう。
そのような状態になると、競合企業との商品競争が発生した場合でも、価格以外での差別化が可能になります。また、ブランド力を向上させれば、企業は市場において独自のポジションを確立でき、ファンとなった顧客によって安定した収益を得られるようになるのです。
顧客の潜在的なニーズを掘り起こせる
ブランドマーケティングによって、市場や消費者自身も明確に認識していなかったニーズを見つけられる可能性もあります。例えば、ブランドマーケティングをおこなうためにコーヒーを飲む方の調査をした際、朝に飲まれる缶コーヒーの需要を見つけ出し商品化につなげている事例があります。
この商品は、消費者がまだ気づいていなかった潜在的なニーズを掘り起こし、新たな価値を創造した商品の一例です。顧客が本当に求めていることを見抜き、そのニーズを満たせば、強いブランドロイヤリティを築くことが可能です。その結果、長期的な成功へとつなげられるのです。
広告費用を節約できる
ブランドマーケティングが成功し、ブランドの認知度や信頼度が高まれば、広告予算を大きく抑えることもできます。ブランドの地力が付くことで、認知度向上のための広告は不要になっていきます。
また、ブランドのファンを増やすことで、広告を出稿して商品の価値を宣伝しなくても、消費者が指名買いをしてくれるようになるでしょう。さらに、ブランドのファンがSNSや口コミで、企業に代わってその価値を伝えてくれることもあります。
ブランドマーケティングをおこなった結果、さまざまな広告効果が発生するため、多額の広告費用を投じてプロモーションをしなくても、商品やサービスが売れるようになるのです。
新しいビジネスチャンスにもつながる
ブランドマーケティングが成功すれば、新たなビジネスチャンスも得られます。
信頼できるブランドを確立できれば、顧客は熱心なファンとなるため、企業の新しい取り組みに対しても期待します。その結果、ブランドが新しい市場に進出したり、商品を発売したりした際に既存のファンによる一定の売上が見込める可能性があるといえるでしょう。
それをうまく利用することで、企業は新しい取り組みにも挑戦しやすくなるのです。
また、新しい商品やサービスの開発をおこなうときに、ブランドのファンを通じてニーズの調査ができるため、ヒット商品の開発につなげられる可能性もあります。
ブランドマーケティングの具体的な実施手順
ブランドマーケティングによって得られる効果がわかったところで、次に気になるのは具体的な手順ではないでしょうか。ここからは、ブランドマーケティングを実施するための具体的な手順を紹介します。
ペルソナを設定する
一般的なマーケティングと同じように、ブランドマーケティングにおいてもまずはペルソナ設定から始めます。また、ブランドマーケティングでは、ターゲット顧客のペルソナ設定は極めて重要です。
顧客のニーズ、関心、行動特性を深く理解することで、ブランドのコンセプトや商品の設計、コミュニケーション方法を決めやすくなります。
顧客として個人を想定する場合は、年齢や性別、職業、収入、家族構成、居住地、趣味やライフスタイルなどを決めましょう。反対に、法人を想定する場合は、業種や従業員数、売上規模、抱える課題やニーズ、購入意欲、購入決定に影響する要因などの設定が重要です。
できるだけ具体的にペルソナを設定することで、効率的かつ効果的なブランドマーケティングを展開しやすくなります。
ブランドのコンセプトを設計する
ブランドのコンセプト設計は、ブランドマーケティングにおける中核的な要素です。
この過程においては消費者の抱くニーズを的確に捉え、それに応えるものを具体的に提示することが大切です。ニーズへの回答となる商品を提供することで、消費者に自社の商品を自然と選んでもらうことができます。
消費者から選ばれやすくするためにも、自社のブランドがどのようなブランドで、どのような価値を提供できるのかを明確にすることが大切です。また、市場調査をしっかりおこない、自社ブランドが選ばれる理由を明確にしたうえでブランドストーリーを設計していくことも重要となります。
商品やサービスを設計する
ブランドコンセプトが決まったら、それを具現化する商品やサービスを企画、設計をします。ブランドコンセプトを商品やサービスに反映させることで、消費者に一貫したブランド体験を提供できます。
ブランドコンセプトに合った商品を提供することで、顧客はブランドを信頼し、自社商品やサービスをリピートするようにもなるでしょう。
広告クリエイティブを制作・発信する
商品やサービスを設計できたら、広告などで商品の情報を発信します。その際、予算やリソースには限りがあるため、手当たり次第に始めてしまわないよう注意しましょう。
広告クリエイティブは、ペルソナに伝えたいことの優先順位を検討したうえで制作することが大切です。広告クリエイティブは、商品やサービスの「顔」でもあり、消費者に商品を手にとってもらうためのきっかけにもなります。そのため、制作する際は、ペルソナに興味をもってもらえそうなビジュアルやフレーズを盛り込むように心がけましょう。
広告クリエイティブが完成したら、最後に発信をします。発信媒体は、ターゲットとの接点を作りやすく、親和性の高いものを選びましょう。例えば、10代や20代の若者をターゲットとするなら、TikTokやInstagramなどのSNSを活用するのが有効です。
ブランドマーケティングの成功事例
世間に知られている企業には、ブランドマーケティング戦略を用いて、競合他社との差別化に成功している企業が数多くあります。ここでは、新しい価値の提供、潜在的なニーズをうまく掘り起こしたことによる3つの成功事例を紹介します。
シャネル
シャネルは20世紀前半に設立されたブランドです。当時は豪華で派手なファッションが流行していましたが、窮屈なコルセットから開放されたいと願う女性は数多く存在していました。
そこでシャネルは、「新しい価値の提供」として、ジャージ素材のドレス、パンツスタイルの服など、機能性、実用性を重視した服を次々と発表していったのです。シンプルかつ着心地のよい服は話題を呼び、多くの女性たちに受け入れられ、その地位を確固たるものとしていきました。
また、「潜在ニーズを掘り起こす」ということで、当時喪服のイメージが強かった「黒」のドレスをあらゆる場面で着用できるようにデザインしました。最高級素材だけで作られたことによって希少性が生まれ、ブランドイメージの保護に成功したのです。
明治
2016年に発売された「明治ザ・チョコレート」は、これまでチョコレートの定番であった「横型」ではなく、海外で主流の「縦型」のパッケージにリニューアルした商品です。一見すると中身がチョコレートだとはわからないような洗練されたパッケージデザインが特徴です。
思わず誰かに紹介したくなるデザインで競合商品との差別化を図り、異例の大ヒット商品となりました。このデザインには、「チョコレートはおやつ」というイメージを脱却し、「大人の嗜好品」という新しい概念を取得することを目標にしていたそうです。
新しいデザインや大人な味わいがニーズに刺さったことで、新たなチョコレートブランドの構築に成功しています。
アサヒ飲料
アサヒ飲料の缶コーヒー「WONDAモーニングショット」は、「朝専用」という潜在的ニーズを掘り起こして成功した代表事例の1つです。そもそも、缶コーヒーに「朝」という概念はなく、飲む時間に注目してアプローチしている企業はありませんでした。
しかし、市場調査をおこなった結果、ビジネスパーソンの多くが朝に缶コーヒーを飲んでいることがわかったのです。アサヒ飲料はここに着目し、「朝専用」という新しいコンセプトを作り出しました。
その結果、競合との差別化に成功し、独自のポジションを築くことができた事例となりました。
ブランドマーケティングはビジネス戦略に欠かせない
ブランドマーケティングは、製品やサービスではなく、「ブランド」という無形資産を前面に打ち出し、消費者の心に強い印象を植え付けるビジネス戦略です。
これにより、消費者はブランドに対する信頼を抱き、感情的なつながりも感じます。その結果、長期的な顧客ロイヤリティと市場での競争優位性を獲得できるでしょう。
ブランドマーケティングの成功は、激しい市場競争の中で生き抜いていかねばならない企業にとって、非常に有効なビジネス戦略といえます。