マーケティング戦略の種類|立案の手順とフレームワークを紹介
マーケティング戦略とは、自社がどのようなマーケティング活動を展開していくのかという方向性を定めることです。本記事では、マーケティング戦略の意味やフレームワーク、戦略立案の手順などを紹介します。
マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、顧客のニーズや自社の状況などをもとに、「どのような顧客に」「どのような商品・サービスを」「どのくらいの価格で」「どのように提供するか」を決定することを指します。
物質的に豊かになり、顧客の興味関心が複雑化した現代では、商品・サービスの価値だけでは、顧客から自社商材を選んでもらうことは難しくなっています。
そのため、マーケティング戦略を通じて、顧客のニーズに合わせて商品・サービスや販売方法、販売場所などを変えながら、競合他社の商材との差別化を図る必要があるのです。
マーケティング戦略の基本的な種類や用語を紹介
マーケティング戦略として代表的な種類を3つと、重要な指標を1つ紹介します。
ターゲットマーケティング
ターゲットマーケティングとは、顧客の属性や興味、嗜好などにより市場を細分化し、その市場の特定の顧客(想定顧客層)に対してマーケティングをおこなうことを指します。万人向けの商品・サービスを提供するマスマーケティングとは対局にある戦略です。
ターゲットマーケティングでは、市場全体にアプローチするのではなく、具体的な顧客層にのみアプローチします。企業の経営資源は有限であり、すべての顧客に対応することは現実的ではありません。そこで、市場規模や自社商材のコンセプトや強み・弱み、競合他社の状況などを加味したうえで、ピンポイントの市場と顧客を選定してマーケティングすることにより、費用対効果を向上させることが可能です。
One to Oneマーケティング
One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりの属性や購買傾向などからニーズを読み取り、それぞれに合わせた最適なマーケティングをおこなうことを指します。
従来は、顧客一人ひとりに合わせたアプローチは非現実的でしたが、IT技術の進歩によりビッグデータを扱うことができるようになったため、低コストでの実現が可能となりました。具体的には、Cookieなどによるデータ収集によって、パーソナライズされた広告コンテンツを顧客に提供することが挙げられます。
ICTツールを活用すれば費用対効果が高く、顧客への不快感を最小限にしつつもニーズの高い情報を与えられるため、信頼関係を築きやすくなります。
CRMマーケティング
CRMマーケティングとは、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムを使って顧客情報の蓄積と管理をおこない、その情報を分析・活用して、顧客満足度を高める効率的なマーケティングを指します。
CRMマーケティングでは、「顧客情報の蓄積と分析」「分析をもとにした施策の実施」「施策の効果検証と改善」を繰り返しながら長期的な顧客育成を目指します。リピートに重きを置いた売上モデルの構築につながり、顧客に自社商材の特徴を理解してもらうことで、他社との差別化と自社商材のブランド力向上が可能です。
LTV
マーケティング戦略において、既存顧客の維持のために重要視されている指標が、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)です。LTVは、ある顧客が自社商材の利用開始から終了までの期間に、その顧客から得られる利益を表します。
市場の拡大が止まっている分野においては、新規顧客を獲得することが難しいため、既存顧客からいかに長く利用し続けてもらうかが大切です。顧客ロイヤルティー(商材に対する愛着や信頼)の強さを測る指標の1つであるLTVを高める施策を実施すると、既存顧客を維持しやすくなります。
LTVを高めるには、One to OneマーケティングやCRMマーケティングが効果的です。
マーケティング戦略に活用できるフレームワーク4つ
マーケティング戦略を決定する際には、「どのような顧客に」「どのような商品・サービスを」「どのくらいの価格で」「どのように提供するか」を定める必要があります。それぞれ項目を定めるために役立つフレームワークを4つ紹介します。
STP分析
STP分析は、「Segmentation(市場の全体像を把握し細分化)」「Targeting(狙うべき市場を決定)」「Positioning(市場での自社の立ち位置の明確化)」という3つの英単語の頭文字を取って名づけられた分析法です。基本的に、「S→T→P」の流れで進めます。
STP分析を実施すると、顧客のニーズを整理したうえで自社商材の強みを明確にし、競合他社に対する優位性を明確化しやすくなります。つまり、ターゲットとする市場で、どのようなマーケティング戦略をおこなえばよいのかが把握しやすくなるのです。
STP分析を有意義なものにするためには、ユーザー目線に立つことが重要です。
4P分析
4P分析とは、マーケティング戦略立案時に使用するフレームワークです。STP分析などにより立案した戦略を具体化する際の分析に使用されます。4Pとは、「Product(商品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促活動)」のことを指します。
Product | どのような商品によって市場へ価値を提供するか |
Price | どのくらいの価格で提供するのか |
Place | どのような販売経路で提供するか |
Promotion | どのような宣伝・販促をおこなうか |
上記の4つの視点から、自社商材を分析し、課題や強み、アピールポイントなどを洗い出し、自社独自のマーケティング戦略につなげます。
4C分析
4P分析は企業視点が強い分析手法ですが、反対に4C分析は顧客視点の分析に長けたフレームワークです。4C分析では、顧客目線で価値のある商品・サービスとはどのようなものかを把握し、マーケティング戦略を立案していきます。
4Cは、「Customer Value(顧客の価値)」「Cost(顧客の支払うコスト)」「Convenience(顧客の利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」の4つの項目から成り立っています。
4C分析は、競合他社の商材との差別化や顧客ニーズに合った自社商材の開発に役立つでしょう。状況によっては、4P分析と4C分析を適切に組み合わせることが重要です。
PEST分析
PEST分析は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの観点から、外部環境(マクロ環境)が自社に与える影響を評価するフレームワークです。
PEST分析は、社会情勢や経済状況といった自社でコントロールできない外部環境を分析し、今後のリスクを予測するのに役立ちます。マーケティング戦略や施策の方向性を明確化し、市場の将来性や変化を予測するために用いられる分析手法です。
マーケティング戦略立案の手順とは?
続いてマーケティング戦略を立案する手順などを紹介します。ここでは、6つの手順に分けて確認していきましょう。
1.市場調査
まずは市場の状況、とくに外部環境を調査します。法改正や人口変動、社会情勢の変化やその影響などについて、客観的な事実を収集します。
また、市場調査に合わせて、内部環境についても確認するとよいでしょう。内部環境では、自社の強みと弱みや自社商材の強みと弱み、顧客数やリピート率、過去のマーケティング戦略の実績などを分析します。
マーケティング戦略を立案するには、最初に外部環境と内部環境を分析し、状況を把握することが大切です。
2.市場細分化
市場にはさまざまな属性やニーズを持った顧客がおり、それぞれ顧客のニーズに一律に対応することは難しいため、市場の細分化がマーケティングにおいて重要となります。
市場を人口動態変数(年齢・性別・世代など)や地理的要因(国・地域・人口規模・気候など)、行動特性(求めるベネフィット・購買状況など)、心理的要因(パーソナリティ・ライフスタイルなど)の条件で細かく区分しましょう。
市場を細分化することで、その市場の顧客のニーズに応じた商材の開発やマーケティング戦略を実施しやすくなります。
3.ターゲティング
市場を細分化したら、細分化した市場から自社に適したターゲットが存在する市場を選定します。企業の経営資源は限られています。そのため、市場規模や成長性が期待でき、かつ自社商材と親和性の高い市場をターゲットに定め、リソースを投下させることが重要です。
ターゲティングがうまくいけば、その市場で優位な地位を築き、顧客のリピート率を上げて収益向上をしやすくなります。
4.ポジショニング
ターゲットとする市場を決めたら、競合他社との差別化を図るためポジショニングをおこないます。
顧客に自社の商品・サービスを選んでもらうには、その商品が顧客に対して明確なベネフィット(価値や利益)を提供し、その価値を認知させる必要があります。このため、ポジショニングはマーケティングにおいて重要です。
また、ポジショニングの検討時には、「競合他社の商材よりも優れているか」ということよりも「顧客に自社商材にベネフィットがあると認識されているか」という視点が大切です。顧客に評価され、ベネフィットを認識してもらえるような方針を策定しましょう。
5.マーケティングミックス
市場や顧客の分析が完了したら、具体的なマーケティング戦略の実行を決定します。この際、複数のマーケティング的要素を複合的に考慮し、最適なものを選択する必要があり、その結果として実施される戦略をマーケティングミックスと呼ぶこともあります。
マーケティングミックスでは、4P分析と4C分析を組み合わせ、最適な商品やサービスの選定、適切なプロモーションの計画を目指しましょう。4Pや4Cの各要素が調和して最適化されているかを確認し、それが顧客のベネフィットにつながるかを重視することが大切です。
6.実行・分析
ここまでの手順を踏まえ、「どのような顧客に」「どのような商品・サービスを」「どのくらいの価格で」「どのように提供するか」という視点からマーケティング戦略を練り、実行に移します。
マーケティング戦略は、一度決めたらそのまま続けていくというものではありません。その効果を定期的に分析し、課題や改善点を見つけて、戦略を見直していく必要があります。
マーケティング戦略は企業の成功に必要な要素
顧客のニーズなどが多様化・複雑化した現代において、多くの商品・サービスの中から自社商材が選ばれるには、マーケティング戦略が不可欠です。
顧客のニーズに適した商品・サービスや販売方法、販売場所などを柔軟に調整しながら、市場で優位なポジションを確立し、競合他社との差別化を図ることが必要です。適切なフレームワークを活用して、顧客が自社商品を認知し、購買するための戦略を構築しましょう。